くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「続・名もなく貧しく美しく 父と子」「映画と恋とウディ・

続名もなく貧しく美しく

「続・名もなく貧しく美しく〜父と子〜」
名作「名もなく貧しく美しく」の続編であり、昨日見た「六條ゆきやま紬」の二年後に松山善三監督が描いた作品故に、ちょっと期待半分でしたが、さすがにメッセージ性が強すぎて、脚本が鼻につくほどにしつこい出来映えになっている。

時代背景を考えると仕方ないのだが、執拗かつ異常なくらいに差別される聾唖者の現実を切々と、時に残酷なくらいにストレートに描いていく。映画の冒頭からいわゆるゴーゴー喫茶の耳をつんざくような音をバックに物語が始まるあたり、かなり音へのこだわりの画面になっています。

時折ガラスの割れる音や騒々しいほどの工事現場の音が効果音として使われていくあたりはちょっとあざといほどでもあります。

北大路欣也扮する主人公一郎が恋人の夕子を家に連れてくるとこらから物語が始まる。父が聾唖者であることを知った恋人は露骨に嫌悪感を示し、一郎から去っていく。父道夫が聾唖者であるために主人公の就職さえうまくいかない当時の現実は今となってはかなりの時代性を感じるのですが、ストレートに差別発言するシーンがくりかえされるのはまさに当時の世相そのもので、そのことへのメッセージが松山善三が描きたかったことだと思います。

クラブで知り合った会社社長の娘美世との縁談の話から、美世の恋人とのエピソードにも聾唖者の結婚の問題、子供の問題が浮き彫りに描写され、医者による聾唖の遺伝の説明まで語られると正直、うっとうしくさえなってきます。

前作でも見せるワンシーンワンカット長回しのシーンなど松山善三らしい演出も見られますが、さすがにストーリーテリングのうまさより、徹底した聾唖差別へのメッセージが全面に出すぎた作品であり、時代を経てみるとちょっと無理が残る。

名もなく貧しく美しく」が人間ドラマとしての純粋さが評価され、美しいシーンに素直な感動を呼ぶことができたのに対し、続編である今回の作品はちょっとこだわりすぎた感じです。聾唖問題のこだわっていくのは悪いとはいいませんが、映画として、映像としての見応えもほしかったというところでしょうか。


「映画と恋とウッディ・アレン
元来ドキュメントは見ないのですが、ウディ・アレンについてということで時間もあったので見に行きました。

ウディ・アレンの映画同様、軽いタッチの音楽に乗せて、彼の過去からの姿を映しだしていく。時折挿入される懐かしい彼の作品の名場面なども交えてくるのはこの手のドキュメントの常道であるが、若い頃に見た彼の作品で好きな一本「マンハッタン」や「アニー・ホール」のシーンをほとんど覚えていないのはショックだった。

それでも、彼の映画がいかにウィットに富んで、シャレっ気満載であったかはその細切れの映像を見ればわかる。もちろん、最近の作品にもまだまだ知的な中に潜むユーモアが生み出されているのは確かであり、もう一度過去の作品にスクリーンで見られたらと悔しい想いもしてしまいました。

ドキュメンタリー映画としての出来映えとかは私は語ることなどできませんが、ウディ・アレンがその映画製作に至るまでの人生、映画を作るようになってからの考え方の変遷なども楽しく語られていてとってもハッピーなひとときでした。