くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コーダ あいのうた」「とむらい師たち」

「コーダ あいのうた」

「エール!」のリメイク。オリジナル版を踏襲しながら思い切った部分を修正した分こなれた作品になった感じです。オープニングの両親のガサツさを下ネタを散りばめて描写したのは、全体に緩急がついてよかったと思いますが、総じてはオリジナル版の方が映画としてのクオリティは高かった気もします。でもこのリメイク版の方も泣きました。監督はシアン・へダー。

 

主人公ルビーが漁船で漁をしている場面から映画は幕を開ける。歌いながら作業する彼女だが、彼女以外の家族は全員聾唖者で耳が聞こえない。この設定を港についた場面で一気に見せる。唯一の健常者のルビーは家族と周囲の人とのコミュニケーション役でここまで生活してきたが彼女は歌が大好きで、学校で合唱のクラスに入る。

 

合唱のクラスの担当教員のベルナルドはルビーの才能を見抜き、音楽大学に行くように勧める。一方、ルビーの日常は家計は火の車で、ややガサツな両親もルビーを頼り切っていた。さらに、売上金の問題で地元の仲買人との間で確執が膨らんできていて、ルビーの兄のレオは、自分たちで組合を作って仲買人を通さずに売るという事業を始める。一方ベルナルド先生はルビーに個人レッスンをすることにし、自宅で教え始めるが、何かにつけルビーは両親に頼られ遅刻しがちになる。

 

両親がルビーの自由を奪うことに抵抗のあるレオは両親に意見するが、聾唖者であることに引っ込み思案になっている両親はなかなか意見を受け入れられなかった。ある夜、ルビーと両親は口論となり、翌日ルビーは恋人のマイルズと一日遊んで、船に乗らなかった。ところが、ルビーの両親の船に乗っていた監視員が沿岸警備隊に連絡して、聾唖者が船を操作している危険性から漁の禁止と罰金を言い渡される。帰ってきたルビーを一旦は両親は責めるが、一方で、次へ進む時が来たことを知る。

 

やがて、学校の発表会、ルビーの家族は見に来るが、耳が聞こえないので全くわからない。しかし、ルビーとマイルズのデュエットシーンになり、周囲の反応を見つめる父は、娘の才能と成長を知る。このシーンが実に美味い。そして、その夜、父はルビーに目の前で歌ってほしいと頼み、ルビーの喉に手を触れる。

 

大学受験を諦めていたルビーだが、受験日、両親に起こされ、受験会場へ連れていかれる。そして遅刻ながら、ベルナルドの伴奏で受験させてもらう。その様子を二階席から家族も聴いていた。そして後日、ルビーは見事に合格、両親に見送られ大学の寮へと旅立って行って映画は終わる。

 

オリジナル版と構成も展開も同じですが、選曲が親しみやすいものに変わったのと、緩急をつけた改変で、素直に感動する映画になりました。映画のクオリティはオリジナルの方が良かった気がしますが、このリメイク版もいい映画でした。

 

とむらい師たち」

なんともレアな珍品映画でした。あれよあれよと展開する適当なドラマのエンディングがあれか!と思わず開いた口が塞がらなかった。ほんまに日本映画衰退期のなんでもありの一本でした。監督は三隅研次

 

日本万博を目前に控えた大阪阿倍野区の区役所の窓口、死亡届を出しに来た住民に飛び込んでくるのは主人公ガンめん。彼はデスマスクのサービスを生業にする男だった。そこへやってきたのは地元の葬儀屋で、さらにライバルの葬儀屋も現れてのドタバタから映画は始まる。

 

ガンめんは営業停止になった美容整形外科の医師先生と組んで、死に顔の美容からデスマスクへと仕事を広げ、さらに葬儀社も新しく作り、一貫した体制でテレビも使ってどんどんビジネスを大きくするが、ふと立ち止まり、死者への尊厳を守ることこそ本来の姿だと、一人会社を飛び出して、日本万博の前に葬儀万博を開催すべく奔走を始める。しかしなかなか金も人も集まらず一人奮闘していたが、突然大きな音がして、外に出てみると一面瓦礫の山、どうやら水爆を投下されたと嘆くガンめんが瓦礫の穴に落ちて映画は終わる。

 

なんともコメントしようがない映画でした。