くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マジック・イン・ムーンライト」「ギリシャに消えた嘘」「

kurawan2015-04-15

マジック・イン・ムーンライト
やっぱり、ウディ・アレンは、しゃれた映画を作りますね。ストーリーだけを聞いたときは「トリック」と同じだなと思ったけれど、ウディ・アレンの知的センスが絡むと、とってもおしゃれなラブストーリーに変わりました。

物語は、1923年ベルリン、中国人の扮装でマジックを演じる人気マジシャンスタンリーの舞台シーンから始まります。しかも、彼は相当な皮肉屋で、世の中の不思議な出来事に種のないものはないと断言してはばからない高慢な男。

舞台を終えて楽屋に戻ったスタンリーに、友人のハワードが、南仏にすむ大富豪の女性が霊能力者と名乗るソフィとその母にすっかり傾倒して困っているから、目を覚まさせるために、種を暴いてくれと頼みにくる。
こうして物語は始まりますが、明らかに「トリック」である。

スタンリーは、最初は乗り気でなかったが、フィアンセマギーとの旅行の約束をのばし、ハワードと南仏へ。そこで美貌の霊能力者ソフィと出会います。

最初は皮肉ばかり言っていたが、時々ズバリと言い当てるソフィに、次第に翻弄され、信じ始める。そしてその確信がやがて恋に変わっていく下りは、まさにウディ・アレンの世界。甘ったるいようなレトロな音楽をちりばめ、クラシックカーで南仏の道を走るロマンティックシーンの繰り返し、機関銃のようなせりふの応酬、時々観客に語りかけるような演出と、ウィットに富んだせりふにどんどん、このしゃれた物語に引き込まれる。

亡き夫を呼び出すときに、ハイとイイエをテーブルをたたくどんどんで合図にするというエピソードをラストシーンで生かすという台本の妙味は、まさにウディ・アレン

ソフィもスタンリーもそれぞれにフィアンセがいる境遇ながら牽かれていく展開、そして、実はハーバードが仕組んだトリックだったと、ソフィの霊能力を暴くラストから、やっぱり、スタンリーはソフィのことが好きでプロポーズ。しかしソフィは大富豪の御曹司との婚約へ。

失意のスタンリーが、結婚してほしいというとどんという机をたたく音がして、振り返るとソフィの笑顔。これがウディ・アレン映画のエンディングである。

ほんのり楽しい物語に、ひとときの喧噪をわすれさせてくれる魅力。ウディ・アレン映画を堪能できた一本でした。


ギリシャに消えた嘘」
パトリシア・ハイスミスらしいサスペンス、その魅力が、導入部分とラストシーンに光る映画でした。ただ、本編部分のたたみかけが、今一歩だれたために、中盤から終盤がやや弱いのが本当に残念。

映画はアテネでガイドをしているライダルの場面から始まる。向こうにアメリカ人紳士チェスターと妻のコレットが、観光を楽しんでいる。ライダルは、チェスターが先月亡くなった父にそっくりなので見つめている。この導入部のすれ違うような映像が、まずすばらしい。

そして、何気なく知り合い、親しくなった三人は、青空市場でブレスレットをコレットがチェスターに買ってもらう。それはライダルが勧めた地元の民芸品。タクシーで帰るも、車にブレスレットを忘れているのに気がついたライダルはチェスターのホテルへ。一方チェスターの部屋に不審な男が訪ねてきて、チェスターを銃でおどす。思わず防戦したチェスターはその男ともみ合い、男は頭を打って死んでしまう。そこでチェスターはその男の部屋にかつぎ込もうと廊下にでる。ブレスレットを返しにきたライダルが近づいてくる、このサスペンスは一級品でヒッチコックを彷彿とさせるのだ。

そして、事件に巻き込まれたライダルは、チェスター等が逃げるのを手伝うことになる。

三人が、クレタ島に避難し、旅券の偽造が完成するのを待つ間、コレットとライダルは何気なく牽かれはじめ、チェスターは投資詐欺で大金を手にしたが、やくざ組織に追われているという背景が見えてくる。

やがて、遺跡で言い争ったチェスターとコレット、そして、誤ってコレットが階段を落ちて死んでしまう。

こうしてチェスターは二つの殺人に関わり、それにかかわったライダルも警察に追われることに。

ラスト、警察の盗聴機をつけてチェスターとあうが、気がついたチェスターは逃げ、ライダルも逃げ、チェスターは警察に撃たれ息を引き取る、直前、ライダルの無実を盗聴機に吹き込んで死んでしまう。

釈放されるライダルの後ろ姿でエンディングだが、逃避行に入ってからが、ちょっと時折間延びするのが実にもったいない。後少しで傑作サスペンスになったろうにと思う。

とはいっても、パトリシア・ハイスミスの空気が存分に漂う佳作だと思うし、十分楽しめる一本でした。ヴィゴ・モーテンセンは本当にかっこいいね。キルスティン・ダンストはさすがに年をとってきた気がしました。


「カイト/KITE」
日本の人気アニメの実写化ということだが、なんともテンポの悪い映画だった。ミュージックビデオ出身の監督らしいが、ミュージックビデオそのままで、ストーリーテリングになっていないから、つなぎ合わせの映像ばかりが次々と続く。

物語の背景も、キャラクターの個性も全く見えてこなくて、独特のアクションというふれこみのおもしろさも漂ってこない。しかも主人公のサワも、それほど強くもないし、カリスマ的な見せ場も全くない。退屈そのものの映画でした。

みるべきものを探せば、サワを演じたインディア・アイズリーというのはオリビア・ハッセーの娘なのだそうで、どこか目元がそっくりなのが、見所でしょうか。でもそれほどかわいいと思わないし、オリビアの幼い頃の愛くるしさのかけらもない。

近未来、暴力と人身売買が横行する世界で、両親を殺された主人公サワが、父の元同僚の警官と組んで、復讐をするというのが本編。

ビジュアルのおもしろさも、今時ありきたりで、音楽センスも秀でたものがない中で、中途半端なアクションが繰り返される様は、時間の無駄にしか見えないのです。

結局、いつのまにか敵を倒し、真相が明らかになり、エンディング。なんだったのという映画でした。、