くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハハハ」「次の朝は他人」

ハハハ

「ハハハ」
ヨーロッパで絶大な人気の韓国の監督ホン・サンスカンヌ映画祭ある視点部門グランプリ受賞作をみる。予定していなかったが、特に見る映画もなくなったので出かけたのです。

なんと、ちょっとおもしろい映画を作る人だとわかりました。韓国映画にしてはしゃれたあか抜けた感じがする。確かにデジタル映像の薄っぺらな画面は少々気になるけれども、不思議な魅力のある物語を紡いでいく。

主人公ムンギョンが統営という町で先輩チュンシクとであうところから映画が始まる。この二人の会話がストップモーションで何度も何度も挿入されそのたびに乾杯として次のシーンへ移る。

ムンギョンはこの町にふぐ料理を食べさせる母がいて、この町で一人の女性ソンホクに出会い愛をはぐくんでいく。その話をチュンシクと話している一方、チュンシクは結婚しているが愛人ができてその愛人ヨンジュと愛をはぐくんでいる。このチュンシクとヨンジュには友人チョンホがいてチョンホとソンホクは恋人同士。それぞれの話にはそれぞれでてくるが、お互いに絡み合っているとわかっているのは観客だけという展開がおもしろい。

ソンホクはチョンホと別れ、チョンホはソンギョンの母の店の二階にすむことになる。そこでソンホクはムンギョンとの関係を考え始め、一方チュンシクはヨンジュとうまくゴールインへと進んでいく。ソンホクとチョンホはよくソンギョンの店に行っていたという話もでる。

しかし、最後の最後までそれぞれ一つに重なることなく、それぞれが、いい恋愛をしているものだなと別れていってエンディング。ちょっと粋な物語にいつの間にか引き込まれる魅力のある映画ですが、淡々と絡み合わない物語が陶酔感のようなものを生み出していくから不思議である。

韓国映画にしては世界的にみてもオリジナリティのある作品だと思えるし、カンヌ映画祭で評価されたのもわかるほどおもしろかった。


「次の朝は他人」
この作品もちょっと小粋な小品で個性的な一本でした。映画全体から漂ってくるムードが独特で、いつもの韓国映画の雰囲気とは少し違ったヨーロッパ的な色合いが見え隠れする。

主人公で映画監督のソンジュンがソウルへやってくる。かつての先輩ヨンホに会うために連絡をするが、なかなか彼は現れない。たまたま知り合った映画学校の学生三人と飲んでそのまま昔の彼女キョンジンのところへ転がり込むソンジュン。

夜が明けて再びソウルに戻り、ヨンホと会い、その後輩の教授ポラムという美しい女性と会い、別の先輩とレストランで酒を飲む。そんなシーンが繰り返され、そのレストランのママで昔の恋人そっくりのソン・イェジュンと一晩を過ごしたソンジュンは夜が明けて、それぞれ他人として別れていくというお話。

全編モノクロームのしゃれた映像の中で雪景色や路地のネオンや明かりが美しく、その中で繰り返し繰り返し描かれる男と女のさりげない会話と目に見えるようで見えないプラトニックな恋がなんともいえない淡い映像となって伝わってきます。

抑揚のある派手な展開は全くないのですがどこか癖になるような画面づくりにはまってしまう一本で、ホン・サンス監督作品にのめり込むファンがいるのもどこかうなずける映画でした。ちょっとした佳作ですね。