くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「桜並木の満開の下に」「東京戦争戦後秘話」

桜並木の満開の下に

桜並木の満開の下に
ほとんど、自主映画のレベルの作品だった。一つ一つのシーンがやたら間延びする。果たして二時間を超える内容が脚本に描かれているのかと思えてしまうのです。しかも、演技指導が十分になされていないのか、演技自体も素人のような台詞回しと動きがやたら目に付くのが残念。ベルリン映画祭に招待されるという府ね舩橋淳監督の才能というのはどこをみるのかわからない。

物語は非常に単純。町工場で働く研次と栞。研次の両親の反対があるものの結婚した二人は、順調な毎日を送っていた。ところが、研次が事故で急死。その事故の原因を作った工が工場へやってくる。一方、工場の受注の減少で経営も厳しくなる。

物語はこの工の奮闘もあって工場は持ち直し、さらに、栞の傷も次第に癒えてきて、工へのほのかな恋が生まれてくるというお話であるが、いかんせん、一つ一つの描写がやたら純長で、作品全体のそれぞれのエピソードのバランスが崩れている。

前半の研次の死から工の登場、工場の危機、持ち直しから工が大阪へ去る。そのそれぞれの長さが半端にかみ合っていないので、いったい、物語がどこへ進むのかつかめないのである。しかも、栞が工に心を開いていくというありきたりの展開なのだから、もっと、映像やカットの組み合わせ、エピソードの長さのバランスを工夫しないと二時間を超える意味がないと思うのです。

ラスト、駅でさりげなく手を握る工に「あなたを許す」と栞が答え、一人電車に乗って去っていく工。満開の桜の下を歩く栞のショットと、かつての研次の言葉が被さってエンディング。これはあまりにも普通なのです。

終盤、ため息が連発してしまったのは私だけだろうか?ちょっと期待はずれの一本でした。


「東京戦争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語」
話はシュールなめくるめくような物語なのだが、画面づくりがしっかりしているし、カットとカットの組み合わせのうまさ、人物の配置や、背景の構図が本当に絶品で、話はともかく、映像で引き込まれる一品でした。

映画はいきなり、一人の男が「カメラをかえせ!」と叫んでいるシーンに始まる。そして、カメラを持っているらしい男の一人称カメラから、それを追う主人公元木の姿。次のショットで追いかけていた男がビルから飛び降り自殺する。そばに落ちているカメラを元木が拾って、警察に取り上げられて、仲間のところに帰る。

お話は、この元木という男たちがなにやら政治闘争をしていて、カメラを持っていったらしい「あいつ」という男を元木が捜索を始める。

はたして、「あいつ」という人物が実在するのか、元木と同一人物なのか、という背景の中、若者たちが政治闘争の論争に熱いシーンが繰り返されたり、デモのドキュメントが流れたりと、大島渚らしいテーマの物語が続く。

人物と人物の会話の場面の配置や、町並みをとらえるカット、郵便ポストのショットや、様々なシーンが本当に計算された構図になっている。

最後は、元木がビルの屋上から飛び降りてエンディング。
屋上から国会議事堂が見えていたり、皇居が見下ろせたりと、意味ありげな画面が映されるが。めくるめく堂々巡りの物語は、そういった政治色を廃しても、映画として十分に評価できる映像表現とストーリーテリングのおもしろさを堪能することができました。