くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グッバイ・ファーストラブ」

グッバイ・ファーストラブ

甘酸っぱい青春の一瞬を、感受性豊かな感性で、詩的に映像にした映画でした。

監督は「あの夏の子供たち」のミア・ハンセン=ラブ。たわいのない物語で、特にテクニカルな映像も見られない。強いて言えば、フランス映画によく見られる青、赤、黄色三色を時折、画面のあちこちに配置していることだろうか。

みずみずしく輝くような映像演出を徹底し、町並みも、部屋の中も、自然の景色も、きらきらとまぶしいくらいにピュアな色使いで美しい。しかも、主演のカミーユを演じたローラ・クレトンという女優さんが、非常に素朴な顔立ちで、しかも若々しくてチャーミングなのがとっても好感。

映画は、一人の青年シュリヴァンが自転車で疾走しているシーンに始まる。とある部屋にはいると、そこに一人の女性カミーユが全裸にシーツを着てベッドに横たわっている。そのシーツをはがすシュリヴァン。二人は恋人同士なのだ。時は1995年。

ふたりはまだ高校生のようで、シュリヴァンは高校を中退し、一人南米へと旅にでようとする。シュリヴァンとカミーユの仲むつまじいシーンが展開し、屈託のないSEXシーンも描かれる。実に健康的なシーンが続く。

カミーユを残して一人旅だったシュリヴァン。手紙のやりとりのシーンが続く。そして2003年。「このまま別れよう」というシュリヴァンの手紙。

カミーユは大学で建築学を学び、そこで恩師ロレンツと知り合う。そして二人はやがて結ばれる。

あまりにもよくある話だが、淡々と語られる展開に、いつの間にか、至上のリアリティと甘酸っぱさが漂うのだから不思議である。

そして2007年、バスの中で偶然シュリヴァンの母にあったカミーユは、久しぶりにシュリヴァンと会いたいとメモを渡すのだ。そして、二人は再会。懐かしい友人関係だったはずなのに、カミーユは片時もシュリヴァンを忘れていなくて、愛も途切れていなかったのだと打ち明けるのである。

カミーユとロレンツの関係も実にほのぼのとしたビジネスパートナーとしての夫婦に見えるのだが、まったく、この展開はどうなのだろうとさえ思える。しかし、ローラ・クレトンの魅力にストーリーは牽引されるのである。

ロングヘアーからショートへ、そしてまた髪が伸びて時間の流れを描写していく。

カミーユはロレンツに隠れて密会を重ね、ロレンツの留守に自宅にシュリヴァンを迎えてSEXしたりする。シュリヴァンは自分が住むマルセイユに来てほしいというのである。

口実を設けてマルセイユへ行こうとしたカミーユの前に運命のいたずらか、列車が運行停止。やがて、シュリヴァンから一通の手紙が届く。「やはり二人は別れよう・・・」

郊外の家で幸せに暮らすロレンツとカミーユカミーユがロレンツを川に誘う。しかし、彼は少し後で行くから先に行きなさいと言う。カミーユは帽子をかぶり、一人川へ。真っ赤な水着に着替えて川遊びをしていると、帽子が川に落ちる。それを追って川に入り泳ぐカミーユのショットからカメラが引いて俯瞰でエンディング。

シーンの背後に歌声が挿入されるシーンが何度も登場し、その選曲のよさもあって、画面が本当に心地よくストーリーを紡いでいくのである。ラストシーンで、川を俯瞰でとらえるカットに被さって聞こえる歌もまた、どこかこの切ない物語を美しくまとめあげていくのです。

決して、際だった傑作といえないかもしれませんが、一見の値打ちのある心地よい映画でした。