「青春を返せ」
一昔前の法廷ドラマという感じの映画で、無実の罪で逮捕された男の無実を晴らすために奔走する女の物語。ストーリーはしっかりできているので最後まで楽しめました。監督は井川探。
木工工芸の会社を営む平凡な家庭のショットの始まり、突然近所で殺人が起こる。たまたまその家に行っていたこの会社の社長が逮捕され、自白を強制されて、死刑となる。
その妹が、兄の無実を晴らすために奔走し、最後の最後に無実が証明されるが、妹は交通事故に遭い、死んでしまう。
畳み掛けるような展開と生真面目な演出で、しっかりと描いて行く物語は見応えがあります。もう少し、一工夫あれば傑作になるのではと思うような映画でした。
「若草物語」
浅丘ルリ子、芦川いづみ、和泉雅子、吉永小百合と日活がスターを揃えてとった青春映画。清々しい空気感は出るのですが、物語はかなり適当に仕上がっています。でも、これが娯楽だなと楽しめる映画でした。監督は森永健次郎。
東京に住む姉の元に、大阪から三姉妹が家出してやってくるところから映画が始まります。東京で幼馴染みの青年に出会い、懐かしい恋が芽生える一方で、新たな恋のライバルが出現。
さらに、海外に行こうと頑張る妹の姿や、姉の恋人に恋心を描く三女の姿などなどが展開しますが、どれも適当に流れて、ラストもこれというまとまりもなくという映画。
でも、当時の青春スターが一堂に集まっただけで、これだけ爽やかな映画になるのですから、スターの存在感はやはりすごいものです。単純に楽しい映画でした。
「真白き富士の嶺」
太宰治の短編を映画化した名編で、難病で死んでいく一人の少女の儚い切なさを描いた映画としては、いい感じでした。監督は森永健次郎。
逗子の家から東京に引っ越す主人公たちの家族のシーンから映画が幕を開け、先日妹を白血病の闘病の末に亡くした姉の回想から物語が始まる。
病院での治療が一段落した梓は、小躍りするように自宅に戻る。本来東京に住んでいたが、療養のために逗子に父が家を買ったのである。そして、逗子での生活が始まる。
梓に来る謎の手紙の主M・Tを姉たちが探す物語が終盤に展開、梓が出会う青年との淡い恋、そして手紙の差し出し人を騙って姉が出した手紙を梓が見破る。そして、梓が自ら手紙を出していたことがわかり、間も無くして梓は死んでいく。その三日後、梓が知り合った青年も一人ヨットで沖に出て死んでしまう。
青年が梓をヨットに乗せて転覆してしまい、それから梓の病状が悪化したと思ったのかどうかはわからないが、東京へ戻って行く姉たちのシーンで映画は終わる。何か切ないが、文学作品ならではの抒情的なラストがとってもいいです。