くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ビトレイヤー」

ビトレイヤー

さすがに、製作総指揮がリドリー・スコットだけある。非常にシャープでスタイリッシュな映像がファーストシーンから観客を引き込んでくれます。物語も、練り込まれすぎているのではと思えるほどに複雑に絡み合い、まるで近未来の映画のようにモダン。

幾何学的なメインタイトル映像が終わると、なにやだ近代的な画面が映る液晶画面の機器がとらえられ、ゆっくりとカメラが床に移動すると煙が漂っている。室内はSF映画を思わせるようなデザインになっていて、ゆっくりとパンすると、人が倒れている。そこへ背中に鞄を背負った数人の男が走り抜け、バイクにそれぞれ乗るのである。オレンジ色のナンバープレートを横に並べるカットから、ダイヤモンドの輝きのような夜の都会のショットがとらえられる。

犯罪者と思われる彼らを一台の車が追いかける。乗っているのはマックスという刑事である。追われているのは強奪事件を繰り返す大物犯罪者スタンウッドとその一味である。

疾走するバイク、真上から大きくとらえる夜の大都会の映像、追いかける一台の車。やがて、狭い路地にバイクが入っていくが、こんなロケ現場どこから探してきたのかと思えるほどに、近未来的な構図の場所を走り抜ける。車を降りて追いかけるマックス。一台のバイクをひっくり返すが、自分は丸腰なので、バイクの男スタンウッドに足を撃たれ、逃げられる。そして三年後。

息をのむほどに美しい夜のビル群のシーン。まさにリドリー・スコットがと得意とするカットだが、監督はエラン・クリーヴィーという人である。

飛行機の中でそわそわする一人の青年ルアン。彼あわてて飛行機を降りて、空港を走るところで誰かに撃たれる。父スタンウッドに電話。父のカット。彼方にオーロラが見える美しいショットにハッとさせられる。

こうして、息子の危機に、海外に逃亡していた父スタンウッドが戻ってきて、その気配にマックスがスタンウッドを待ちかまえる。一方でマックスと相棒でやや恋心もあるサラは、銃撃事件で犯人になったウォーンズが、なぜか突然釈放されたことへの疑念で、調査している。物語がどんどん錯綜してくる。もう少し、整理してシンプルにしてもよかったのではないかと思う。

銃器所持反対の風潮を覆すべき訴えをするワイズマンという議員とその事務長のジェーンの存在もちらほらとストーリーに政治色をからめてくる。

映像が美しいために、込み入ったストーリーとのバランスが微妙によくない。お互いが牽制してしまって、一本の作品として、製作側の意図がぼやけてしまっているのである。

映像を全面に出した作り方をするのか、ストーリー展開のおもしろさに重点を置いた演出を施すのか、一方を主に一方を従にした演出をすればもう少しシンプルで娯楽色の強い佳作になった気がしないでもない。

結局、息子が死んでしまったスタンウッドと、サラを殺されたマックスが手を組んで、本来の悪者であった警察長のトム、さらに銃器拡販をし、武器輸入を促進すべき利害の絡んだキンケード社、武器密売のウォーレスの絡み合いがどんどん、ストーリーを複雑に構築していき、終盤で一気に真相を明らかにするとはいえ、ちょっと、懲りすぎた帰来があったかな。

ラストは、密輸した銃器を保管していたコンテナターミナルでの銃撃戦。マックスとスタンウッドが、トムやウォーレスと撃ち合う。そして、当然正義は勝つのだが、マックスはスタンウッドを逃がしてやってエンディング。

シンメトリーなカットや真上からの俯瞰撮影、光や照明を効果的に画面に取り入れた映像がとにかく美しい。ほとんどのシーンを夜の都会や暗い室内を中心にした映像づくりにはかなりのこだわりがあるようであるし、時折はいる見上げたショットなども実に美しい。ストーリーがやや煩雑すぎるのも映像の美しさに惑わされてしまうためかもしれない。でも、見逃せない一本だった気がします。おもしろかった。