くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ディーパンの闘い」「神なるオオカミ」

kurawan2016-02-12

ディーパンの闘い
カンヌ映画祭パルム・ドール賞を受賞したジャック・オーディアール監督作品。

最近はカンヌの最高賞と言ってもこういうレベルの作品が実に多い。スリランカからフランスにやってきた難民の物語で、ストーリーは至ってはシンプルな人間ドラマである。

主人公ディーパンがスリランカの国を出るのを待っている。死体を焼く場面、いかにも戦闘の後という風景で、その場にいた女ヤリニを妻に、ヤリニが拾ったイラヤルを娘にし、偽装家族としてフランスに渡るところから映画が始まる。

フランスで手配されたアパートに住み、管理人としての仕事をこなすディーパンと近所の老人の世話の仕事につくヤリニ、学校へ行き始めるイラヤルの平和な生活が始まるが、そのアパートは地元チンピラたちの溜まり場となっていて、ヤクの売買などが行われていた。

そんなある日、チンピラ同士の発砲事件が起こり、物語が動く。かつて戦闘員だったディーパンは過去の記憶がよみがえり、白線を引いて自分たちの生活にチンピラが入り込まないようにする。そんな中ヤリニはイギリスに脱出したいと言い始める。

やがてヤリニの仕事場の老人と若者が抗争で殺され、すんでのところでディーパンに助けられ物語は終盤へ。

おそらく、イギリスに渡ったであろう景色と、平和に暮らすディーパンたちのシーンでエンディング。確かに良質の作品だし、見応えはあるのですが、賞を取るほどのものかという感じの映画でした。


「神なるオオカミ」
久しぶりのジャン・ジャック・アノー監督作品は、中国モンゴル地方を舞台にした大作でした。

いかにも3Dと言わんばかりの美しい夜景に吠えるオオカミのカットからタイトル。

時は1967年、都会で教養を身につけた青年たちが地方の農村に派遣される。そんな青年を主人公に、野生のオオカミと、自然一体になり暮らすモンゴルの人々の物語である。

とにかく大自然の景色が抜群に美しいし、オオカミが疾走する場面や、狩りをするシーンを大胆な俯瞰で追いかけるカメラも素晴らしい。

圧巻は前半、寒波が襲ってきた大草原で、馬を守るために人々が夜飛び出すが、一方、餌を奪われたオオカミが復讐するかのように、馬を狩り、凍った湖に追いやる。夜が明けると、凍った馬が湖に乱立している。圧倒される景色である。

他にも、広大な草原をバックにした自然の景色が雄大そのもので、人間が本当にちっぽけに見えるのである。

物語は赤ん坊のオオカミを捕まえ、育てる主人公のヒューマニズムと、自然を淘汰するために迫ってくる中国上層部の施策、近隣の部族との確執などが描かれていく。

結局、草原のオオカミは殺戮され、飼っていたオオカミを放してやってエンディング。なんのことはないとはいえ、美しい映像に酔うだけでも値打ちのある作品でした。