くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛さえあれば」「モネ・ゲーム」

愛さえあれば

「愛さえあれば」
美しい大人のラブストーリーの秀作でした。それに、色彩演出が美しくて、ヨーロッパの監督らしく青、赤、黄色の原色をちりばめた画面づくりがとってもおしゃれで、スタイリッシュなのです。

特にフィリップの基調色となるブルーが画面の至るところにさりげなく配置されている。一方のイーダの基調色のレッドが、次第にブルーに変わっていくという小粋な演出を施している。

黄色の粉末のようなものがビルを覆っていくシーンで監督のクレジット。そして、軽い音楽に合わせてメインタイトルが流れる。黄色はフィリップが事業で成功したもとになったレモンの色である。

映画は、イーダが乳ガンの治療を終え、医師にとりあえず治療は終わったと申し渡されるところから始まる。まもなく、娘のアストリッドがイタリアで挙式をあげるのでその準備に家に戻ると、夫ライフが会社の女性とSEXをしている。

ここに、農産物の事業で成功したフィリップは会社で誕生パーティのサプライズの後、同僚の女性から迫られるが、さりげなく断る。そして、イタリアで挙式をあげる息子パトリックの元へ。

ところが空港の駐車場でイーダの車がフィリップの車に衝突、それで二人は知り合う。

物語はここからイタリアでのパトリックとアストリッドの結婚式の準備のシーンも交錯して挿入されるが、まどろこしいシーンをすべてばっさりと削除し、エッセンスのシーンをちりばめていく展開が実にハイスピードで心地よく物語が進む。

そして、パトリックたちのところへフィリップも到着。遅れてイーダも到着、ところが愛人を連れてライフもやってくるというなんともあり得ない展開に始まる。

物語はパトリックとアストリッドの式までの数日の騒ぎを描いていくが、妻を亡くしたフィリップはどことなくイーダに引かれ始めている。フィリップには妻の妹が執拗に迫ってくる。パトリックの友人の一人がゲイで、パトリックを思っている。イーダは抗癌治療のため、髪の毛がなく、ウィグをかぶっている。

そして式の当日、とうとう、アストリッドは結婚をやめる。パトリックも納得の上で婚約解消し、招待者は各自の家に。

ところが、イーダが家にもおると、バラの花びらが散らばり、バラの花が至る所に。ライフがやり直したいとバラの花束を。一方フィリップはイーダの美容院へ出向き、イタリアに一緒に行こうと誘う。しかし、イーダは断るのだが。このころには、イーダの頭にも髪の毛が少し生えている。イタリアで首にしこりがあって、癌の再発かと病院で検査したがその結果をみることができない。

朝、ライフがイーダにどこかに旅行でもいかないかというと、イーダは、二人の仲はもうだめだから分かれよう突g留。服はブルー一色に変わっている。心がフィリップに移ったのである。そして、イーダはフィリップのいるイタリアへ。

レモンの出荷準備をするところへイーダが現れる。そして、病院からの検査結果をみることができないのでみてほしいと頼む。海をみながらフィリップが開封して、二人で見つめあってキスしてハッピーエンド。はたして、検査結果はどうだったかはあえて語られない。二人には関係がないのである。

黄色の粉が空にかかりエンドタイトルに流れていくというおしゃれなラストである。

式場で真っ赤なドレスのイーダが、次第にフィリップのブルーに染まるという色彩演出によるストーリー展開がなんともモダンで、絡んでくるゲイの話や、ライフの愛人となる尻軽女や、フィリップに迫る面倒な叔母の存在などもさらりとすり抜けていくストーリーテリングの妙味はなかなかのものです。

ピアース・プロスナンが今一つ田舎臭いムードがただよい、都会的なイメージがでてこないのがちょっと、違和感がありますが、もともとレモン栽培という農業が事業成功のきっかけの男だから、それでいいのかもしれません。

ちょっと、見逃したくないおしゃれなヨーロッパ映画に出会ったという感じでした。


「モネゲーム」
コーエン兄弟が書いた脚本を元に、マイケル・ホフマンが監督をしたミステリーコメディ。例によって、ウィットとコミカルなシーン満載のコーエン兄弟色がちりばめられた一本でした。

とっても、楽しくて、ラストのどんでん返しも、まぁまぁなのに、どこかテンポに乗り切れなかったのは、やはり監督の演出力量の弱さでしょうか?

とはいえ、しゃれたコメディ映画を見たという読後感のような感覚は味わえた一本でした。

まるでピンク・パンサーのタイトルバックのようなアニメを背景にタイトルが流れる。映画が始まると、主人公ハリーが今つとめている会社の経営者シャバンダーの横暴に復讐すべく、モネ収集家でもあるシャバンダーに贋作のモネの「積み藁」をつかって詐欺を計画する。

贋作の専門家ネルソン少佐に準備させた絵をもって、その所有者とするべくPJ・ブスナウスキーを巻き込んでいく。

最初に、なにもかもがうまくいったという映像をさらりと見せて、物語はPJを誘うシーンへ。

あとは、コミカルな展開をこれでもかと取り入れ、予定していた展開にならずに奔走するハリーたちの姿を追いかけていく。

キャメロン・ディアス扮するPJが巻き起こすハプニングの数々に、当初ハリーが鑑定することで詐欺を成功させようとしていたら、シャバンダーが別の鑑定士を雇うし、どんどん計画が狂っていくのですが、なんと、新しい鑑定士が贋作を本物と鑑定、それをさらにハリーが見破り、シャバンダーを見返すシーンがちょっと陳腐。これではちょっといけないでしょう。

計画は失敗したかに思えたが、ハリーはPJを空港で送りだした後の、実はシャバンダーの本物のモネの絵をすり替えていたというどんでん返しと、以前からほしがっていた日本人に空港で売り渡してハッピーエンド。PJには報酬として、ハリーが持っていた小さな本物のシスレーの絵を送る。

贋作と知らずにほくそ笑むシャバンダー、全裸のヌーディストだったのは事実だったとカメラが引いてエンディング。

もっと小気味よくて、ハイテンポに笑いをもたらしていけるはずなのだが、コーエン兄弟の脚本がちょっと甘いのか、演出手腕の感性が足りないのか、どこか不完全燃焼に終わる。おもしろいお話なのに、よく考えると「トーマス・クラウン・アフェア」のどんでん返しに酷似していることに気がついて、さらに興ざめしてしまった。

見せ方が弱いのでしょうかね。ちょっと残念な一本でした。