くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アフター・アース」「学生ロマンス若き日」「和製喧嘩友達

アフター・アース

アフター・アース
M・ナイト・シャマラン監督は、どんな形であろうと自分の精神世界を徹底的に追及してきた。娯楽を無視したほどの徹底ぶりが私は大好きだったのですが、なんともこんな平凡な娯楽映画を撮ると思っていなかった。

どこかに彼流のシュールでドキッとするシーンが、展開があると思っていたのに、眠っているキタイを起こすために死んだ姉が声をかけるシーンくらいで、あとは淡々と平凡な冒険劇が展開。正直がっかりしてしまった。

映画はウィル・スミスが自ら物語を書いて、実の息子ジェイデン・スミスと出演するために持ち込んだ企画だという。しかも、映画自体もほとんど公私混同状態で、冒頭で怪我をした父レイジ将軍は息子キタイに危険惑星と化した地球を冒険させ、不時着した宇宙船の半分に残された救難信号を発信する装置を取りに行かせるだけの話なのだ。

導入部で、地球がどうなって、人類はどうなって、そして、現在はこういう状況でと、見せ場になるはずのスペクタクルはすべてナレーションで終わり、主人公のキタイが昇進試験にパスしないところから物語が始まる。

従って、画面はこのキタイがでているシーンがほとんど占めるし、これというアクションもさすがに頼りないし、派手なエンターテインメント映像もないし、最後の最後で異星人がはなったアーサーという怪物と戦う場面ぐらいしか見せ場はない。

で、ラストはめでたく息子のキタイは精神的にも成長し、瀕死の父の治療も成功。二人で母と一緒に働こうと抱き合ってエンディングなのだからたまらない。

なんだ、これだけ?的なラストにがっかりの一本でした。


「学生ロマンス若き日」
サイレント映画で、現存する小津作品で最古の作品である

遙かに見える大学の校舎、運動場、ゆっくりとカメラがパンして背後に字幕「都の西北・・」そして一見の下宿へ。「二回鹿島」の張り紙。。
教科書のようなカメラワークで映画が始まる。

物語は軟派のお調子者の学生と、ちょっとぐうたらな学生の掛け合い漫才のような楽しいコメディ。そこかしこに挿入される軽妙な会話のおもしろさが字幕でぱっぱtぅと入ってくる店舗が実にいい。

懐かしい路面炎者の中での男女の淡い濃い物語。さりげなく見せる当時の学生生活のお気楽さ。秀逸なのはスキー場での軽い展開で見せるコメディシーンの妙味である。

何事も調子のいい二枚目の学生が、めがねをかけたちょっとワンテンポ遅い友達が目を付けた女性を意図も巧みに奪ってしまう。それも妙なしつこさもなく、軽いどたばた劇のような展開で手に入れる下りが実に楽しい。

結局その女性は現地の男性と見合いをするらしく、二人とも降られて下宿へ帰ってくる。調子のいい学生はもう一度「二回鹿島あり」と張り紙をして、のんきな友達を慰める。カメラは冒頭と逆の動きでゆっくりとパンして運動場から大学の校舎へと流れてエンディング。

久しぶりにみたサイレント映画に、最初はさすがにリズムに乗れずにしんどかったが、スキー場のシーンあたりから、その見事な店舗にすっかり乗せられてしまう。傑作とかいう感想は私などは無理だが、非常に洗練された映像のうまさは確かに必見の価値あり。このあたりに小津安二郎の才能が見え隠れしている。楽しい一本でした。


「和製喧嘩友達」
短編映画で、留吉と芳造の二人の男が車に乗っていて一人の女性を引っ掛けてしまい、家につれて帰って解放するが、顔を洗うと飛び切りの美人で、二人はこの女性に気に入られようとする。しかし彼女には若い恋人がいて、二人の男はほほえましく二人の行く末を見るというもの。

単純なドタバタ喜劇で、当時のアメリカ映画のドタバタ劇を思わせる軽いタッチの作品でした。


「朗かに歩め」
こちらは清水宏原作の映画ですが、これも、当時たくさん公開されていたアメリカンムービーにありがちな物語が展開していきます。

港に停泊する船、カメラが引くと並ぶ車、ゆっくりと引いて行くと離れたところでなにやら諍いが。小太りの男が財布を盗んだといちゃもんをつけられていて、そこへ二枚目の男が仲裁に入る。結局、財布は見つからない買ったのだが、実は小太りの男と二枚目の男は兄貴と弟分の仲まで、財布を二枚目の男がかくしているという段取りだった。二枚目の男はカミソリの謙といわれるほどのやくざ者謙二、小太りの男は仙公という。

ある日、宝石屋から出てくるやす江という清楚な女性を見かけ、その女性に恋をする謙二。やがて、そこに謙二の女千恵子が絡み、足を洗うためにガラス付記になる謙二。よくあるドタバタ劇が展開し、ラストは謙二も仙公も警察に捕まり足を洗う決心をする。やがて、刑期を終えた二人をやす江が出迎えてハッピーエンド。

怪談に映る影の使い方や、壁に書かれた落書きを背景にしたこだわりのカット、さらに頻繁に画面に映る英語のロゴなど外国映画のような画面演出が施されているのは、明らかに当時公開されていた外国映画の影響であろう。

小津安二郎のトレードマークのローアングルなどは登場しないが、テンポのよい展開で見せて行く職人的な手腕も持ち合わせた彼の力量をうかがわせる一本でした。今日見た三本は全てサイレント映画です。