くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「桜姫」「真夏の方程式」

桜姫

「桜姫」
見なければよかった。と思う映画に久しぶりに出会った。橋本一監督作品というだけで見に行ったが、まるでVシネマのようなできばえに辟易してしまいました。シネコンに書ける映画ではなく、隅っこの自主上映で見せるレベルの作品でした。

主演の日南響子以下役者の演技がへたくそな上に、肝心の主役を含めその周辺が個性がなさ過ぎ。もちろん主演を演じた日南響子も主役を張るにも関わらず、肝心の所は見せてこないし、周りの取り巻きも適当に露出するものの、何のお色気もないので下品にしか見えない。SMまがいのシーンやエログロな映像がお茶を濁すように挿入され、しまいには退屈になってしまった。

物語はというと、桜姫と呼ばれるほどの麗しい姫が、ある夜、押し入った盗賊権助に体を奪われる。しかしこの盗賊の体が忘れられず、なぜか遊郭におちてその盗賊を捜すというのが本筋のようだ。原作は「四谷怪談」の鶴屋南北である。

遊郭での女同士の諍いの中で展開する嫉妬や欲望の渦が、お遊びだらけのお仕置きシーン、裸のシーン、エログロシーンで展開。さらに姫の家に伝わる家宝の掛け軸が権助に盗まれたので、それを取り戻す展開も絡むのだが、それも何の娯楽味もなく。しかも殺陣もアクションもへたくそ。

いったい様式美の世界はどこへ行ったのか?なんていう高尚な感想さえも吹っ飛んでしまう低俗映画の極みだった。

ラストは権助も掛け軸を狙う追っ手に殺され、薄っぺらなCG映像の桜吹雪の前に立つ桜姫のシーンでエンディングだが、全くひどかった。


真夏の方程式
最近の東野圭吾原作の映画化作品では一番のできばえだった気がします。なんといっても、テレビスペシャルではなく、スクリーンに映すことを意識した画面作りになっている点が最大の評価点です。今回は西谷弘監督がんばりましたね。

モノクローム映像に、一人称カメラで何かを追いかける映像から映画が始まる。陸橋を駆け上がり一人の女性を刺し殺し、その女性の真っ赤な傘が線路に舞い落ちる。風吹ジュン扮する川畑節子が高校生の娘の成実に口止めをして新聞を見せている。そこには仙松英俊という男が女を殺害したことで捕まったという記事が載っている。

そして、物語は現代へ。パンタグラフが火花を散らすカットから主人公湯川が電車で玻璃ヶ浦の開発の説明会に向かうシーンへ続き、そこにこれから絡んでくる少年恭平と出会う。

今回の物語はこの恭平と湯川の心の交流が中心に展開する。デジタル映像であるが、非常に毒々しいほどに誇張された玻璃ヶ浦の夕焼けのシーンはもちろん、駅を真正面で大きく捉えたり、玻璃ヶ浦の浜辺のシーンで効果的なベストショットを選んで人物を配置したりと、丁寧滑こだわった画面作りがされている。その意味で、テレビで見るのとはワンランク上の映像を見ることができたのが良かった。

展開は例によって、泊まった民宿で巻き込まれた元刑事塚原の死を発端に川畑夫婦と娘成美の秘密の物語へとどんどんふくらみを見せてくる。そして、そこに絡んでくるのが今日への清張のドラマでもあるところが実に良く組み合わされているのです。

おそらく、東野圭吾の原作はもっと奥の深い描写がなされていると思うけれども、今回の映画化に当たっての映像というものへの変換のこだわりに重点を置いた演出が成功を収めた。

ラストで、駅で湯川と少年の対話のシーンは普段のガリレオシリーズにない非常に温かみのある人間ドラマを見ることができました。傑作、秀作といえないまでも、無難ながら上質の娯楽映画になっていた気がします。

エンドクレジットも、お決まりの唄を入れずに、心地よいメロディで締めくくり、パンタグラフのシーンでメインテーマに切り替わるというこだわりも好感でした。