軽いタッチのラブコメディで、戦前の小津安二郎の見所の一本でした。
映画はある剣道の試合場にはじまります。コミカルなタッチで試合の場面を繰り返し、そのリズミカルな笑いにまず引き込まれてしまう。ここで、いとも軽々と勝っていくのがこの映画の主人公岡島である。
髯をたっぷり蓄えた男だが、なんせ正義感が強く、無骨。試合の後、外で一人の女性廣子が女の与太者に絡まれているところを助ける。
岡島には男爵家の友人で行本という友人がいる。その妹の誕生パーティに招かれるが、ことごとく女性に人気のない岡嶋は、結局剣舞を披露したりして嫌われ、女性は帰ってしまう。
ところが彼も就職活動をすることになる。しかし、その髯がじゃまをして採用にならない。髯を剃りなさいとアドバイスしたのが、たまたま面接会場にいたかつて助けた女性廣子。アドバイス通り髯を剃ると、いっぺんにホテルの仕事が決まるという展開もまた楽しい。
そして、髯を剃ると、それまで縁のなかった女性の注目を引き始め、行本の妹も彼に引かれるし、よたものだった女も彼に引かれ、ついには改心してしまう。しかし、廣子は常に岡島を信じていたことで、二人は恋仲が成就。窓から床屋の回転塔を見つめてエンディング。
サイレント映画であるが、実に楽しい。映像で見せる笑いのエッセンスが満載で、まるでアメリカンコメディの如しである。例によって、アルファベットの看板もちらりと登場。気楽な娯楽映画ですが、これも小津安二郎の得意ジャンルですね。