くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「100回泣くこと」「アンコール!!」「ハングオーバー!

100回泣くこと

「100回泣くこと」
この映画、評価も最低、思ったほどヒットもしていない。その原因が、わかったような気がします。

非常に丁寧に、淡々と語るストーリー展開と、おきまりのこれでもかという泣かせのシーンをあえて静かな演出で見せているためである。しかし、長回しを多用した素直なシーンの連続が、作品全体を落ち着いたムードに仕上げているのはとっても好感な作品だった気がします。

ハワイの道を走る一台のバス。画面が変わって公園を歩く佳美の姿をカメラは右から左へ延々と追っていく。そこで一人の青年が駆け寄ってくる。藤井というこの気さくな青年は傘を持ってきたのが恥ずかしいという。そういう佳美も持っているので安心したという。佳美は「降らない雨はない」と答え「それはやまない雨でしょう」とつっこむ藤井。かつて恋人同士だった二人が4年後に友人の結婚式で再会する。

こうして物語は始まる。そこかしこに、記憶喪失、癌、別れなど意味深なせりふが被さる。

ワンシーンワンカットが至る所に挿入され、それをじっとカメラが見つめる視線が実に真摯なのです。そして、やがて佳美と藤井は再びつきあい始めるが、一方で佳美が癌であるらしいシーンが挿入され、やがて二人は結婚を前提にした同棲へ。

4年前のバイク事故が引き起こした藤井の記憶喪失。その直前の佳美の癌宣告。これらがどんどん普通に絡んでいくが、淡々と繰り返す長回しのシーンの中で語る藤井と佳美、さらに佳美と友人の夏子との対話のシーンが、実に映画的でテンポがいい。廣木隆一監督の演出は終盤までこの淡々としたリズムを崩さず、クライマックス、藤井が入院している佳美を訪ねて、夜の町をバイクで走り、浜辺で語り合うシーンで一気に細かい映像展開に切り替えてラストシーンへなだれ込む。

よくある作り方であるものの、こういう恋人同士はいるなと普通に思ってしまう。よけいなリアリティ(たとえば病院のベッドの脇の電子機器とか)をいっさい排除し、ひたすら二人の物語のみにポイントを当てた演出がいい。
難をいえば、周辺の人物の描写をいっさいカットしたために、ちょっと薄っぺらく見えなくもないが、そこは藤井と佳美を徹底的に追いかけた映像スタイルとしていいのではないかと思う。

そして、佳美の死後、佳美が夢見ていたムーンライトレインボーをとうとう見ることができた藤井の頬に涙が光る。
そして、母に昇進の電話をしてバイクで走る藤井のショットでエンディングである。

雑誌の評価ほどひどい映画とも思わないし、泣かなかったとはいえ、普通に映画として楽しめたと思います。


「アンコール!!」
ポール・アンドリュー・ウィリアムス監督作品であるが、私の知識の中にはない監督である。

往年の名優、テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレイブを迎えて描くいわゆる老人映画である。特に期待もしていなかったが、その通り、物語の組立が実にまずい一本だった。しかもドラマが描き切れていないために、登場人物の心が見えない、つまり生き生きしてこないのである。

物語は気むずかしい夫アーサーと妻マリオンのお話に始まる。
マリオンは合唱グループで歌を歌っているが、体は病魔に冒され、直る見込みはない。そんな妻をひたすら愛するアーサーだが、人付き合いは苦手。しかも、息子のジェームズとはことあるごとにいさかいが耐えない。

やがて最愛のマリオンが死に、ひとりぼっちになったアーサーは悲嘆にくれる中、マリオンの入っていた合唱団に入り、本体会でみんなで三位になって大団円。

なのだが、なにをどうポイントにしていくのかがぶれているため、どっちつかずなのだ。気むずかしい設定のアーサーもそれほどに見えないし、ジェームズとの確執もそれほど深刻に見えない。さらに合唱団にも意外にすっとはいるし、ラストのコンクールのクライマックスも盛り上げたいのかどうでもいいのかさらりと終わる。

カメラアングルは真正面からの平坦なシンプルショットを繰り返して工夫はみられるが、これもあまり意図が見えないために平凡になってくる。

コーラスを率いるエリザベスとアーサーの交流も中途半端で、結局、コーラスが終わり、仲直りしたジェームスがアーサーに電話、電話の音が聞こえる寝室にいびきをかいて眠るアーサーでエンディング。

アーサーのマリオンへの惜しみない愛が本来のテーマに見えるが、周辺の味付けとのバランスがうまくいかなかったのが残念。もうちょっと、そぎ落とすべきはそぎ落とすべきだったかもしれない。コーラスメンバーの個性もぜんぜん見えていないのももったいないね。


ハングオーバー!!!最後の反省会」
第一作が傑作で楽しんだが、第二作が今一つ、今回の完結編はおもしろいという評判に乗って見に行きましたが、やっぱり第一作を越えることはなかった。

バンコクの南60キロにある刑務所。騒ぎが起きて、看守が見に行くと、まるで「ショーシャンクの空で」のごとき脱走で指名手配犯のチャウが脱走して映画が幕をあける。

冒頭、髭男のアランが車でキリンを買ってハイウェイを走っている。橋桁に首が当たってそのままちょんぎれて車のフロントガラスへ。このギャグがいけない。どうもこういう生き物の命を扱ったギャグは大嫌い。ここから一気に引いてしまって、前半はほとんど乗ることができなかった。

この騒ぎでアランの父が死に、おかしくなったアランを施設にいれるべくフィルとスチュとタグが協力する。しかし、途中でチャウに金をだまし取られたマーシャルがタグを拉致し、チャウと親しいアランらにチャウを探させようとするのが本編。

物語の本舞台は第一作のラスベガスに設定し、例によっての滑るギャグの中でチャウを捕まえ、マーシャルに引き渡そうとするが、チャウがマーシャル等を撃ち殺し、そのままアランらと別れる。

アランはラスベガスで知り合った太ったおばさんと結婚することになり、その披露宴のドンちゃん騒ぎの翌朝、第一作のファーストシーンを再現して映画は終わる。

結局、至る所に第一作へのオマージュがちりばめられ、第一作を抜け出せなかったというのが、その程度の才能だったかとがっかりである。

まったくつまらないとはいえないものの、トッド・フィリップス一発屋だったような気がする。