くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「もうひとつの世界」「ワールド・ウォーZ」

もうひとつの世界

「もうひとつの世界」
悪い人間ではないが、どこか不器用で、中年にさしかかり、体調にことのほか神経質なエルネスト。彼はクリーニング店を経営するが、従業員の名前も把握していない無頓着な男性。大きなめがねをかけて、いかにもうだつの上がらない風体の彼の姿がこの作品にはとっても魅力に写る。

一方、まもなく生涯修道院生活にはいるべく宣誓式を控えるカテリーナ。

それぞれが、今の人生に疑問を抱き、何か別の世界があるのではと模索する日々の中出会うのです。

1998年度作品で、イタリア映画祭で話題になった一本。飛び抜けた傑作ではないけれども、ちょっと気になる、ちょっとすてきな、とってもいい映画でした。

カテリーナはある日、公園で赤ん坊を抱いて近づいてくる男性に出会う。彼はジョギングの途中で赤ん坊を拾ったので病院につれていってほしいと有無をいわせずカテリーナに預ける。

とりあえず、病院に預けたカテリーナだが、くるまれていたセーターに残っていたクリーニング店のタグから、エルネストの店を訪ねる。

エルネストは、赤ん坊が自分の子供ではないかと疑心暗鬼になり、カテリーナと探し始める。赤ん坊は養親を迎えるべく手続きが始まる。

時折、カテリーナやエルネストを交えたスナップ写真のようなものが挿入される演出が、ちょっとしゃれていて不思議な感覚が生まれてくる。

二人は恋に落ちるわけでもなく、と言って一瞬引かれるショットなどもある。それでも、カテリーナは修道女になることにためらいながらも前進しているし、エルネストは目の前に見えてくる何かに向かい始める。この展開が、一見静かに進むのだが、二人の心理描写が優れているので、どんどん映画に引き込まれていくのです。

やがて、赤ん坊は養親に引き取られるが、本当の母親を見つけたエルネストとカテリーナは彼女が出席している友人の結婚式へ向かい、そこで問いただす。しかし、彼女は赤ん坊の父はエルネストではないときっぱり言うのだ。

しかし、ここまでの行動の中でお互いがお互いの人生を見つめ直し、カテリーナは赤ん坊が引き取られた養親のもとを訪ね、自分のロザリオを預けて、改めてカテリーナは修道女になる決意をしエルネストに別れを告げる。いや、そうではなく、修道女をやめてエルネストとの生活に向かう決心をしたのかな?

そんな彼女を見つめるエルネストには、これまでの殺風景な人生が彩りあるものに変わり、体調に異常に神経質になっている自分の殻さえも破るべく、チョコレートをガブガブかぶる。

二人の未来が、何気なく明確になってくるラストシーンは何ともいえないすがすがしささえ見えてくる。ストーリーの所々に登場した人物も、最後まで物語の伏線としてちりばめられて終わるあたりの演出もしっかりしていて素敵。

16年近く一般公開されなかった理由もわからない気がしないわけでもない映画ですが、非常にいい映画でした。


「ワールド・ウォーZ」
平凡な娯楽映画だろうと期待薄で見に行ったのだが、これが結構おもしろかった。

物語の核心へ放り込むスピードがテンポよくて、いっきに本編へ入っていく。しかも、その後のちりばめられるエピソードも見せ場の連続で、よけいな人間描写を排除し、主人公ジェリーが、危機を乗り越えて目的を達成するまでを小気味良く描いた単純な脚本が効をそうした感じの快作でした。

ニュースの音声と映像が背後に流れる中でのタイトルバック、そして主人公ジェリーの静かな家庭の朝のショットへ流れる。あれだけ世界中がパニックなのに、なんとも平和なシーンよな、と思っていると、渋滞に巻き込まれた家族に突然襲いかかるゾンビたち。ここから一気に映画はアクションシーンへ飛び込んでいく。

よけいな家族はジェリーの旧友ティエリーの計らいで、安全な空母にかくまわれ、ジェリーは任務を果たすためにウィルス学者を連れて韓国の米軍基地へ。ところがこのウイルス学者があっけなく死んで、結局ジェリーが一人でこの窮地を救うべく、かすかな手がかりでイスラエルへ向かう。

と、あれよあれよと物語は次の段階へ。マーク・フォースター監督の演出はよけいな人間ドラマをすべて排除し、ジェリーの単独ドラマへと集中させていく。

イスラエルでも危機に陥った彼は、なぜか女兵士をつれて脱出、途中で気がついた、ゾンビウィルスの弱点を確認するためにWHOの施設へ。ところが、途中で飛行機の中に入り込んでいたゾンビでパニック。そのまま飛行機は不時着し、ジェリーと女兵士が施設へ。

この女兵士については最後まで全く語られることもなく、徹底的にメインストーリーだけで突っ走る。

致死にいたる病を持った人間は、ゾンビからは透明になるらしいと発見し、その菌を集めるためにWHO施設の危険ゾーンへ向かうのがクライマックス。そして、一人になったジェリーは自ら菌を注射し、ゾンビに効果があることを確認して、家族と再会、ハッピーエンド。

アメリカ映画おきまりの、エピローグで、まだまだおわっていない。これから平和への戦いが云々となる。

とにかく、おきまりのジェリーに同行するメンバーが危機になったり、涙の犠牲シーンなど全くなく、悪くいえば中身のないストーリーを徹底的なエンターテインメントにまとめあげた作品。だから、導入部からラストシーンまで全然飽きないのである。ああおもしろかったと見終わって、それでどうだったのと聞かれると、こんな感じとシンプルに答えて終わってしまう娯楽映画でした。