くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スーサイド・ショップ」

スーサイド・ショップ

パトリス・ルコント監督が描く、ブラックユーモア満点のアニメーション。ということで、ちょっと期待していたのですが、普通すぎた気がする。

確かに、独特のデザインで描かれるアニメーションはさすがに感性の豊かさを感じさせるのですが、展開が普通で、ドキッとするほどのブラックさもないし、はにかむようなユーモアも見えてこない。

原作があるので、動かせないストーリー展開の根幹はあると思うけれど、もう少し、映像として、アニメとしてはじけてもよかった気がしないでない。こういう映像を作らせると、ティム・バートンは実にうまいなと改めて思ってしまいます。

クレジットが始まり、一羽の鳩が飛び回る町の中は、異様なくらいにどんよりと曇っている。最初は軽く飛んでいた鳩だが、至る所で飛び降りる人々をかいくぐり、自殺していく人々の中をくぐって、仲間が止まる電線にたどり着く頃にはすっかり落ち込んでしまい、自分も電線から飛び降りてハイウェイのど真ん中へ。そして本編が始まる。

この導入部はとっても楽しいし、パトリス・ルコントのブラック炸裂かと思う。しかし、この後、舞台となる自殺用品専門店トゥヴァシュー家に移ると、次々と訪れる自殺志願者の描写が、最初はおもしろいが、ややしつこくなる。そして、まもなく、ネガティブ家族にとってもポジティブなアランが生まれて物語は急展開となる。

余りに悲壮感漂う家族や、やってくる客に、何とか人生って楽しいと知らせたいと奔走するアランの姿が中盤からのメインになるのだが、これといった独創性もなく、最初は姉の誕生日にスカーフとダンスメロディのCDをプレゼントして、すぐにマリリンは陽気に変わるし、車に仕掛けた音楽を店の前でならすクライマックスから、見る見る人々が陽気に変化してしまう。

ここが弱い。結局このままハッピーエンドへ流れていくのがちょっと物足りないですね。

最後に、何か毒が仕掛けられているのかと思ったのですが、結局このままエンディング。キャラクターデザインや背景のデザインなど、絵画的な部分は必見の価値もあるし、オリジナリティ満点ですが、あくまで映画なので、物語のおもしろさももう少し欲しかった気がします。