くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゴースト・エージェント/R.I.P.D.」「フローズン・グラウ

ゴーストエージェント

「ゴースト・エージェント/R.I.P.D.」
いわゆるゴースト版の「メン・イン・ブラック」である。一人の警官ニックが、太った化け物を追いかけて、飛び出してくるファーストショットから映画が始まり、その3、4日前にさかのぼる。いかにもB級映画的な映像に思わず、苦笑いしていると、なんと主人公ニックはライアン・レイノルズだし、相棒の警官ボビーはケヴィン・ベーコン、さらに、死んでからの相棒はジェフ・ブリッジスなのだから、まぁまぁのスターを起用している。監督はロベルト・シュベンケである。

ではあるが、いかにも陳腐なストーリー展開と、ありきたりなせりふの数々に辟易してしまう。しかも、今時この程度のCG特撮は見慣れているので、なんの迫力もない。まぁ、B級だと割り切って、時間つぶし程度にみれたという感じの娯楽映画だった。

証拠品を盗んだニックと相棒のボビー。ニックはちゃんと届けようとしたが、ボビーはその金塊を渡したくないためにニックを殺す。そしてニックはR・I・P・Dにスカウトされ、悪霊退治に。

しかし、あの金塊は死者をよみがえらせる塔を作るためのものだったことがわかり、その陰謀をつぶすべく悪霊と戦うのが本編。

単純な話なのだが、何の工夫もない映像である。強いていえば、クライマックスの撃ち合いのシーンがちょっとがんばっていたかなという感じだ。

結局、生け贄にされそうになったニックの妻ジュリアも助かってハッピーエンドという映画であった。
まぁ、今時の軽い作りのCG映画という感じでした。


「フローズン・グラウンド」
12年間に24人以上の女性を拉致監禁、殺害したロバート・ハンセンの実話を元に描いた作品なので、おもしろかったというのは不謹慎かもしれませんが、映画として、抜群におもしろかったのです。

幼い娼婦シンディが、アラスカ州の市警察に保護されるところから映画が始まる。ボブ・ハンセンという男に拉致監禁され、殺されかけたと訴えるが、ボブが模範的な市民でもあり、相手が不良少女のような娼婦なので、市警察も相手にせず、結局、釈放してしまう。しかし、納得のいかない市警察の刑事が、調査書類を州警察に送る。

一方、アラスカ州警察のハルコム刑事は、家族の希望もあり、危険のない石油会社への転職を考えていた。しかし、身元不明の少女の無惨な遺体が発見される事件が起こり、そこへ届いたシンディの調査資料に目を留めたハルコムはその関連に目を留める。

こうして、一気に物語の核心へ飛び込む導入部が実にスピーディで、この後も、カメラは細かく、刑事と犯人のボブの行動を交互にとらえながら、シンディの姿を描写していく。

状況証拠ながら、ボブ・ハンセンが犯人であると確信したハルコムは、物的証拠を探す一方で、唯一の生きた証人のシンディにも近づく。

ハルコムの家庭の描写、ハンセンの犯行状況、シンディの殺伐とした毎日が繰り返し繰り返し描かれ、そのどれもが、実にしっかりとした視点でカメラにとらえられていくので、緊張感が決して途切れないのである。

みている私たちは、すでに、犯人がハンセンであることを知っているが、彼に迫っていくハルコムら刑事の執拗かつ鬼気迫る捜査の様子が、手に汗握る迫力を生み出していく。そして、刑事の手が迫っていると知ったハンセンが、証拠を隠蔽するために企てる行動にも釘付けになっていく。

さらに、唯一の生きた証人シンディに迫るハンセン。警察に保護されるも、その束縛から何度も逃げては危機に陥るシンディ。そんな彼女に必死で心を開かそうとするハルコム。この行き詰まるようなサスペンスフルな展開も手に汗握るのである。

何とか事情聴取に捕まえたハンセンに、自白させるべく必死になるハルコム。一方、ハンセンが雇ったチンピラがシンディを亡きものにするために迫る。ハンセンの自宅を捜査するも、すでに処分した証拠は警察に前にでてこない。犠牲者の姉に預かったブレスレットを頼りに、最後のフェイクで臨むハルコムの後ろから、勇気を出して、ハンセンの目の前にシンディが立つ。その姿に、思わず「殺しておけばよかった」と自白してしまうハンセン。このクライマックスの緊張感は並ではない。

緊張感あふれる捜査や犯人のシーンの合間に、俯瞰で何度か挿入される、寒々とした町のショットが実に効果的に映像にリズムを生み出してく。細かいシーンの組立が実に巧妙なために、スクリーンから片時も目を離せない。刑事たちの迫真の捜査の姿も、ぐいぐいと画面から迫ってくるし、ジョン・キューザック演じる犯人の飄々とした不気味さも物語にぞくっとする怖さを生み出してくる。

監督はスコット・ウォーカーという人ですが、全く見事な脚本構成と演出に参ってしまうサスペンスミステリーの傑作でした。

エピローグは、犠牲になった女性の殺害現場を案内するハンセンのシーンから、実在の犠牲者の写真が写され、エンドタイトルになる。

何度も書きますが、悲惨な事件の実話のお話とはいえ、映画として抜群におもしろかった。不謹慎ながら、あえて、そう感想を書きたいと思います。