くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「天使の処刑人 バイオレット&デイジー」「ムード・インデ

天使の処刑人

「天使の処刑人 バイオレット&デイジー
何とも不思議な映画だった。一見、美少女たちの殺し屋によるアクション系の映画かと思っていたが、いきなりのファーストシーンがすぎてからは、妙な会話の連続で、ひたすら、不思議でシュールな展開と映像が続く。ただ、その展開のテンポが若干ゆるいというか、平坦すぎるというか、リズムがでてこないという感じである。監督はジェフリー・フレッチャー。

導入部はとってもいい。修道女の服を着た二人の少女がピザを持って、ふつうに会話しながら、とある建物に入っていき、ドアを開けて、いきなりピストルをぶっ放す。

どうやらこの二人、バイオレットとデイジーは依頼を受けて人を殺すスナイパーであるらしい。バービー・サンデーというタレントの新作ドレスほしさに、仕事の元請けの男ラフから連絡がきたちょっと割高の仕事を請け負う。この展開も、一見、空々しいが楽しい。しかしここからいけない。

二人が踏み込むと、一人の太った男マイケルが眠っている。しばらく呆然とみているが、やがて目を覚ます。何かいつもと違うという感覚にとらわれて、いったんキッチンで相談し、目をつむってピストルを撃つと、そこに男がいない。弾がなくなって買いに行く羽目に。て、これって二人はプロの殺し屋だろうと思うが、この間抜けさというか展開が、ふに落ちないのである。

バイオレットが買いにでると、途中で、いかにも不穏な男四人が登場。実は彼らもマイケルを殺すためにやってきたのだ。そして、その四人がデイジー一人のところにやってきたが、危うくやられるところでバイオレットに皆殺しにされる。


後は、このマイケルと、彼女らそれぞれの身の上話のようなシーンが続き、実はデイジーは今まで、空砲しか撃っていなかったとか、バイオレットが妙な夢を見るシーンとかが描かれ、実はこの男は膵臓ガンで余命幾ばくもないから、デイジーに最後は撃ってほしいと頼む。そして、ことが成就して、直後に警察が乗り込むが、バイオレット等は逃走。予定通りの服を買ったが、デイジーは、同じくバービー・サンデーのファンで、マイケルとは最後は溝が出来ていたと聞いている娘に服を届けてエンディング。

ストーリーが一貫していないために、90分あまりの作品なのにやたら長く感じる。導入部のハードボイルドタッチが、マイケルのところに進入してから、やたらまじめな展開になり、バイオレットとデイジーそれぞれの、過去があるようなないような話の内容から、ラストは静かなエンディングと、全体がちぐはぐ。シアーシャ・ローナンがでているのでみた感じですが、何とも中途半端だった。


「ムード・インディゴ うたかたの日々」(ディレクターズカット版)
今回、90分あまりのインターナショナル版と、131分あるディレクターズ版が公開されたミッシェル・ゴンドリー監督の新作。
冒頭から、ちょこまかとしたストップモーションのデジタル特撮映像が続く。部隊は近未来のようで、主人公のコランは何不自由のない裕福な生活をしているという導入部から映画が始まる。

駒落としのような映像が次々と展開するので、このまま、二時間あまりはきついかなと思っていたが、結局、最後までこのパターンに近かった。擬人化されたねずみが走り回ったり、てれびからコックが料理を指図したりと、奇妙な未来世界の中で、コランと友人で黒人のニコラが暮らしている。料理上手で、運転手でもあるニコラとの生活は順風満帆だったが、ある日、友達のパーティで、一人の女性クロエと出会う。そして二人は恋に落ちるが、ニコラのカップルも描かれ、さらに知人のシックとのいきさつも描かれる中で、ひたすら、ちょこまかしたアニメタッチの特撮が続く。

ある日、蓮の花がクロエの肺に入ってクロエは病にかかる。それまで仕事もせずに暮らしていたコランは、彼女の治療のために仕事を始める。しかし、どれもうまくいかず、やがて、お金は尽きて、どんどん貧乏になって行く。画面も、最初は明るいカラー映像だが、次第にモノクロームになり、没落して行くところでは、家も傾き、映像は完全にモノクロの殺伐とした画面になっている。

結局、クロエは死んでしまい、なんともお粗末な葬儀をされてしまうという、アンハッピーエンドである。あれだけ、ファンタジックな導入部で始まる映画なのに、ハッピーエンドじゃないのはちょっとつらいけれども、原作どおりなのだということだから仕方ないかもしれない。途中で、哲学者が社会批判のような言葉を発したり、主人公らが絡んだりするシーンがおそらくインターナショナル版にはないのだろうと思う。もしあのシーンがないのなら、淡いラブストーリーと見える作品であり、まったく印象派違うかもしれない。

個人的には、あまり好みの映画ではないのですが、はまる人にははまる映像表現であり、ミッシェル・ゴンドリーファンにはたまらない一本であったかと思います。