くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マラヴィータ」「42 世界を変えた男」

マラヴィータ

「マラヴィータ
なかなかおもしろかった。久しぶりに、リュック・ベッソン監督の個性的な映像リズムを楽しむことができました。

映画が始まると、とある家族が映され、玄関の呼び鈴に主人が出ていって、のぞき窓をみるといきなり銃で撃たれる。そして、家族全員が殺されて、主人の指が切り落とされて画面が変わる。

いきなりのファーストシーンで引き込んで、舞台は南フランスのノルマンディ。ニューヨークからフランスの田舎に越してきたロバート・デ・ニーロ扮するフレッドとその妻マギー、娘ベル、息子ウォレンがやってくる。なにやら意味ありげなファミリーには、向かいの家から監視する二人の男。

飼い犬の名前がマラヴィータというのだが、どうやら、これがこの男の本名ではないかと思う。

彼らは元マフィアの大物で、FBIとの取引で、仲間を密告し、ドンを刑務所に送った。当然、命をねらわれるので、その保護システムによって、フランスへやってきたらしい。新しい学校で、いきなりその裏社会で生きてきた経験を生かす息子と娘のシーンがとにかく爽快だし、妻も、気に入らないスーパーを爆破したり、フレッドも、気に入らない人間をいきなり痛めつけたりする。

当然、警察沙汰のはずが、実に巧妙で、どこかコミカルでさえある前半部がとにかく楽しいのだ。軽快なテンポで次々と描かれていく、このファミリーのたくましさが最高。
しかも、強気をくじくというパターンが何とも心地よいのである。

地域にとけ込もうと、自分の自叙伝を執筆しながら、近所づきあいをするフレッド。ことあるごとに監視訪問するFBI担当官のスタン。ある日、ふとした学校の宿題に、かつて子供の頃に、父が刑務所送りにしたマフィアのボスの言ったアメリカンジョークを書いて提出し、それが学校新聞に載り、巡り巡って、、アメリカのボスの手元に届いてしまい、探していたフレッドを発見する下りの、偶然が偶然を呼ぶハプニングの展開からのクライマックスは実にうまい。

ベルは、数学の先生に愛を告白するも捨てられ、ウォレンは学校での悪事が公になって高飛びをしようと準備。一方ジョヴァンニを見つけたマフィアのドンが大勢の殺し屋をノルマンディへ送りつけてきて、たまたまその殺し屋たちを見つけたベルとウォレンが家族の危機に立ち上がるクライマックスがこれまた、巧妙なくらいに引き込まれるのです。

たまたま、近所の映画会にスタンと出かけていたジョヴァンニは家に戻って、いきなりの銃撃戦。そして、子供たちの大奮闘の末に、無事殺し屋を返り討ちにして、再び別の地へ向かう彼らの車のショットでエンディング。

映画会ではこの映画の製作者マーティン・スコセッシの「グッド・フェローズ」が流れたりと遊び満点で、所々、やや無理な展開がないわけではないが、とにかく個性的な映像テンポを最後まで楽しめるのです。

ふつうのアクションに飽きてきた人がこの作品を見ると、そのヨーロッパ的な作風に、ものすごい斬新なおもしろさを感じるのではないでしょうかね。そんな、楽しい一本でした。


「42世界を変えた男」
こういう映画は、たまにみて、心を清めないといけないね。
黒人として初めて、アメリカ大リーグ選手となったジャッキー・ロビンソンを描いた伝記映画なので、丁寧に演出すれば当然ながら熱い感動を呼ぶことができる。監督は、「ミスティック・リバー」などの脚本で知られるブライアン・ヘルゲランドである。

物語はドジャースのGMブランチ・リッキーが、黒人選手を採用し、それでワールドシリーズ優勝をしようとスタッフに提案するところから始まる。
時は1945年、第二次大戦終了の年である。
アメリカ大リーグ界、いやアメリカ社会が普通に黒人差別を行っていた時代の話である。

こうして一人の黒人選手がスカウトされ、彼が、様々な差別や罵倒を受けながら、リッキーと共にドジャースの選手として、そして、大リーグ選手として、成功していく姿を描いている。そこにはチームメイトたちの暖かい心の交流の物語、他の大リーグ選手や白人たちの差別や、迫害を受ける姿を絡め、アメリカが変わって行く姿を丁寧につづって行く。そして、後に42番が記念すべき永久欠番となるまでの偉大な物語が描かれていくもである。

もちろん、ラストシーンは胸が熱くなるし、すばらしい人間ドラマだと思います。まぁ、ありきたりと言えばそれまでかもしれないけれど、適当に作れば適当な映画にしかならない題材であり、そこは職人監督としての手腕の見せ所であり、名脚本を書いてきたブライアン・ヘルゲランドが手腕を発揮し、並のレベルの佳作に仕上がっていたのではないでしょうか。

秀でたシーンなどは特にないけれど、まっすぐに演出された映像が、とっても好感で、素直に感動できる一本でした。