くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「幸せへのまわり道」「シチリアーノ 裏切りの美学」

「幸せへのまわり道」

ミニチュアの街並みなどを多用し、子供番組と現実を交錯させながら不思議な演出で描いて行くヒューマンドラマですが、トム・ハンクスの好演もあり、しみじみと染み渡る人間ドラマに仕上がっていました。最近はこの手の人生ドラマにのめり込んでしまうのは歳のせいでしょうか。監督はマリエル・ヘラー。

 

いきなりミニチュアの街並みが現れ、一人の男フレッド・ロジャースが歌いながら登場する。大人気の子供向け番組が収録されている現場から映画は始まります。子供向け番組とはいえ、離婚問題や戦争などの暗い面も扱い、軽妙な会話で紡いでいく大人気番組。

 

エスクァイア紙のやり手の雑誌記者ロイド・ボーゲルは、この日、フレッド・ロジャースの記事を書くように言われる。ロイドは母を見捨てた父をいまだに許していなくて、姉の結婚式に来ていた父ジェリーと喧嘩をしてしまい、はずみで殴られて顔に怪我をしてしまう。

 

自分が得意とする記事ではないものを押し付けられて、形式的にフレッドのところに来たロイドだが、フレッドの巧みで人懐こい言葉にいつの間にか乗せられて行く。物語ははロイドがいつのまにかフレッドに惹かれて、次第に親密になる流れを描く一方で、ロイドとジェリーの確執、ロイドの心の悩みが挿入されて行く。時々、ミニチェアの街並みやフレッドが使うぬいぐるみなどの場面を挿入した自由奔放な演出がなかなか楽しい作品です。

 

ある時、ロイドの家に来ていたジェリーと口論となり、ジェイドは突然倒れてしまい病院へ搬送される。ロイドもいくものの、未だ父を許せないロイドは帰ろうとするが、そこで、フレッドがいつも使っているぬいぐるみを鞄に入れた人物を見かけ、その男を追いかけて行くうちに、突然フレッドの番組に出ることになる。ところが気を失ったロイドはフレッドの家で介抱される。

 

フレッドはロイドをレストランに連れ出し、ロイドにしばらく沈黙して自分を愛してくれた人を思い出すようにいう。次第に心の苦しみが溶け出して行くロイドは、子育てを任せきりにしていた妻アンドレアとも仲直りし、自宅療養するジェリーのもとを訪れる。そして、兄夫婦も呼んでパーティをするが、そこへフレッドも現れる。ロイドの書いた記事は絶賛されて読者を掴み、ジェリーも含め家族の絆もようやく温かいものに戻って行く。

 

まもなくしてジェリーは死んでしまい、フレッドはいつものように番組を収録して、一人残ったスタジオでピアノを弾いて映画は終わる。不思議なほどに惹かれる作品で、自分の人生を何度も振り返ることができました。小品ですがとっても素敵な映画だった気がします。

 

シチリアーノ 裏切りの美学」

決して凡作ではないし、作品のクオリティは高いのですが、いかんせん、登場人物の見分けがつかないので、本当のところが十分理解しきれなかった。もう一度思い出して整理したい。監督はマルコ・ベロッキオ

 

イタリア、犯罪組織コーザ・ノストラパレルモ派の幹部級のブシェッタのパーティシーンから映画は幕を開ける。名だたる組織の幹部たち、愛人、子供たちが集まる盛大なパーティだが、血で血を争う毎日に疑問を感じる日々だった。しかも敵対するコルレオーネ派の非常な殺戮が横行している。

 

この後、次々と子供達や仲間が殺される様が描かれていき、ブシェッタは抗争をまとめきれずブラジルに逃れる。しかし、まもなくしてブラジルで逮捕されたブシェッタはマフィア撲滅に執念を燃やすファルコーネ判事に捜査の協力を求められる。かねてからコーザ・ノストラに失望していたブシェッタは組織の罪を告白する決意をする。

 

そして300人以上のマフィアの構成員が逮捕され、ブシェッタは政府の保護のもとに生活をするようになる。映画の後半は、保護され、平穏に暮らすブシェッタの姿と度々法廷に引き出されて証言を続ける彼の姿が描かれる。ファルコーネ判事が何者かに高速道路で殺されるに及んで、アメリカで暮らしていたブシェッタはイタリアに戻ってくる。しかし、彼にはかねてからの病があった。

 

60歳を超えての彼の誕生パーティーに集まる一族、パーティの後、屋上で一人眠る彼。眠りの中で、パーティを後にして次々と友人たちが帰って行く。一人残された男の前に若きブシェッタが現れ、撃ち殺して映画は終わる。おそらくブシェッタの夢だったのだ。コーザ・ノストラの組織に入って間も無く命令された狙撃がなかなか出来ず、最後の最後行動を果たせたという切ない夢を見ていたのだろう。

さすがにクオリティの高い作品ですが、もう少しゆっくり整理して思い出したら、作品が見えてくる気がします。