くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画鑑賞「ルートヴィヒ」

ルートヴィヒ

巨匠ルキノ・ヴィスコンティも描いた、ルートヴィヒ二世の物語。二時間半ほどあるだけに、さすがに長く感じられるが、ヴィスコンティ版とは違って、人間ドラマに徹底的にこだわった演出が、圧倒的な狂気の世界へはまりこんでいく、主人公の姿をしっかりと映し出していきます。

もちろん、ヴィスコンティ版の、至上の格調の高さはさすがに表現できませんでしたが、全くの凡作というわけでもなかったようにも思えるのです。ただ、映像自体が実に薄っぺらいこと、主演したザイン・タンビレアという俳優が本当に線の細い、神経質な風貌ゆえに、作品全体にスケールの大きさが感じられない。まぁ、ヴィスコンティ版と比べること自体が無理なので、その部分はおいといて感想を書いてみたいと思います。

映画は、まだまだ、親に頼りっぱなしのようなルートヴィヒの青年時代から映画が始まります。ローエングリンという歌劇に見入られた彼は、まもなく、父の急死によって王位につくことになる。しかし、精神的にも未完成に近い彼の繊細な心が、一気に覆い被さってくる国王という重圧に、見る見るみる壊れる様が、見事に描かれている。

そして、平和と芸術を好み、国政をおろそかにしても、ひたすら財力にものを言わせて、ワーグナーを呼び寄せて、ローエングリンにこだわるあたりは、まさに狂気の世界である。

デジタル映像であろうと思われるのですが、すっきりとした色彩が全編を覆っていく。もちろん、近隣諸国の驚異なども物語の中に登場するのだが、画面づくりに大きさが感じられず、ひたすら、壊れていくようにみえる国王の姿は、ふがいないほどに痛々しいのです。

結婚生活もまともになれず、周辺国との政治的なやりとりも、頼れるほどのふてぶてしさはないのですが、ときに、ちゃんと国政を司ってるかに見えるシーンもちゃんと挿入されているのは、なかなかのものです。

そして、やがて、数々の名城を造り始めるクライマックスにかけては、年数を三年後、十四年後と時間を走り抜けて、やがて、病院に収容され、散歩にでた隙に湖に身を投げて自殺してエンディングになる。

さすがに、しんどい作品であるが、といって、全く、損をしたと思えるほどにひどい映画でもなかった。まぁ、普通の映画でした。やはり、ヴィスコンティ版の迫力というか、存在感が大きすぎますね。