くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ばるぼら」「ルクス・エテルナ 永遠の光」

ばるぼら

原作があるのでなんとも言えないけれど、キャラクターがそれぞれ生きていないし、物語の筋立てが今ひとつ見えてこない。不思議な話なのだが不思議感が漂ってこないのが残念。二階堂ふみの演技だけが光る一本でした。監督は手塚眞

 

都会の遠景から映画は幕を開ける。売れっ子作家だった美倉洋介だが、次の作品に苦悩している。地下道で薄汚く横たわる一人の女を洋介が拾って家に連れて帰る。彼女の名はばるぼら、何者かもわからないが何故か彼女を見ていると筆が進む洋介。

 

その夜は追い返したが、洋介がマネキンを抱いたりしていると突然現れ洋介を助ける。さらに、婚約者の父に呼ばれた席で女に誘惑されるも実は飼い犬で、それをばるぼらが助ける。やがて洋介とばるぼらは生活をともに体を合わせ愛し合っていく。そして、ばるぼらに連れて行かれるままに不気味な店で母と会い、彼女と結婚を誓う。

 

そんな洋介を婚約者の女は妨害しようとし、洋介とばるぼらの結婚式に警察を乗り込ませる。裏切られたと思ったばるぼらの母は洋介からばるぼらを遠ざけるが、どうしてもばるぼらとやりなおしたい洋介はある日ばるぼらと再会、彼女を連れて逃避行に出る。しかし、逃亡先でたまたまばるぼらは石で頭を撃ち死んでしまう。小屋の中で全裸のばるぼらと交わる洋介。映画は壊れていく洋介を映し、都会の掃き溜めだというナレーションとともにばるぼらのカットで終わっていく。

 

シュールなジャンプカットはまさに手塚眞の映画だと思うのですが、途中で出てくる洋介の周りの人物の存在が物語を引き立てて行かないのが残念。ばるぼらの母の不気味さも弱いし、メリハリに欠ける作品だった。

 

「ルクス・エテルナ 永遠の光」

なるほどという作品で、混沌としていく撮影現場が狂気に包まれていく様を光の点滅で描き切ったちょっとした中編でした。監督はギャスパー・ノエ

 

魔女裁判の映画を監督するベアトリスと主演のシャーロットが雑談している場面から映画は始まる。ふたつの画面で対峙させ、右に左に字幕が飛ぶのに近れる。

 

やがて、撮影準備が整い二人はスタジオへ向かうが、アメリカから来た自意識過剰の男がシャーロットに自分の次回作を売り込んだり、ベアトリスの父がジャーナリスト気取りで近づいたり、代役の女優が服装が合わないと喚いていたり、撮影監督が文句を言っていたり、画面をスプリットでくぎりながら英語やフランス語が入り乱れ、時間の緊迫感が高まる。さらにシャーロットが娘に電話したら、学校で悪戯されたと聞く。

 

そんなこんなでクライマックスの火刑のシーンの撮影がスタート。リハの時は成功した背景の雲の映像が突然ダウンして原色の光の点滅に変わってしまう。しかも、いつまでも治らず、それでも撮影監督は撮り続け、ベアトリスは中止を叫ぶ。そのうち、はりつけられているシャーロットも叫び始めるが縛られた縄をはずしてもらえず、狂気に変わる撮影監督の叫び声が続く。

 

さすがに映像のテンポはうまいと思うし、緊張感が高まっていく脚本もうまい。ラストの点滅はやりすぎの気もするが映像作品としては楽しめました。