原作で、泣くだけ泣いたので、若干の不安もありましたが、監督が山崎貴、主演岡田准一なら、大丈夫だろうと、見に行きました。
いやぁ、泣きました泣きました。これが映画ですね。二時間半近くある作品ですが、冒頭からすっかりのめり込んでしまって、見せ場見せ場では、涙があふれてくるし、当然、クライマックスでは、わかったいるとはいえ、嗚咽が止まりませんでした。両方に座っていた女の子たちは、もうハンカチを手放せない状態で、鳴き声が漏れてくるし、ほぼ満席の館内も立ち上がる隙も与えず、引き込まれていました。
本来の、娯楽としての映画としては傑作と呼べるものではないでしょうか。
物語は、原作をかなり忠実に、しかもそのエッセンスを完全に、そして見事に再現に成功しています。さらに、特撮シーンも、うならせるほどにすばらしい。
日本の戦争映画で、特撮シーンの傑作はやはり、円谷英二が手がけた、1942年の傑作「ハワイ・マレー沖海戦」につきると思っていますが、それ以降で、最高のできばえではないでしょうか。よくもまぁ、ここまでCG技術は進歩したものだと、驚嘆に近い感動でした。
映画は、宮部久蔵が、いよいよこれから敵艦船に突入するというシーンから始まり、2004年へと移ります。そして、原作通りに、亡き祖父のことを調べる佐伯健太郎、慶子の姉弟の姿を中心に回想形式で描いていく。
目を奪われるほど見事なゼロ戦の飛行シーン、真珠湾攻撃シーンのリアリティある映像、それぞれがぶれることなく、宮部久蔵の人間ドラマを描いていくし、彼に関わった人々の物語も、決して散漫になることなく語られていくから、それぞれに涙が隠せません。
終盤の、飛行機を交換して乗り込むエピソードと、その真相、生き残った青年こそが、現在の祖父であるという下り、さらに、それぞれ、関わった人々の姿が細かいカットでフラッシュバックし、現在の姿とかぶらせる映像演出も見事なものです。
確かに、冷静に見直せば、あの原作を、無難に仕上げたという言葉がでるかもしれませんが、これはやはり、思い切り感情移入して、宮部久蔵のドラマをともに感じ、ともに生き、ともに心ふるわせるべきものだと思います。映画としてのクオリティ云々は別物であり、この作品は映画の本質に迫った傑作だと思います。