くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハロー!純一」「早熟のアイオワ」「ダラス・バイヤーズク

ハロー純一

「ハロー!純一」
満島ひかり池脇千鶴を見たいのと、「スマグラー」の石井克人監督作品なので見に行ったが、梅田ブルクは何の割引もないのが唯一の難点である。

まぁ、確かに、ネットの感想そのままの惜しい一本でした。一番の残念なのが、主演の純一を演じた子役がへたくそすぎること。ふつう、子役というのは、その飾らないままの演技か、妙に大人びた演技が個性になって物語を引っ張るものだが、この子はそのどちらでもなく中途半端にへたくそ。そのために、子供のシーンが全く立ってこない。

一方大人の場面は、満島ひかりの登場で一気に生き生きしてくる為に、子役の半端さが作品をぶちこわしていく。

こうしてみると、子供を描かせるとすばらしい才能を発揮した清水宏の映画の見事さがお思い起こされる。

もちろん、「ハロー!純一」も物語はおもしろいはずなのである。しかし、自然体で自由に演技させるのも一つの演出だが、いかんせん、子役のせりふがなんにも聞こえない。生き生きした姿を出したいだけならそれでいいが、ちゃんとせりふの中につっこみが入っているのだから、これではだめ。それなら台本をもっとシンプルなものにすべきだった。

個性的な小学生がいるとある小学校というファーストシーンがテンポいい。ところが、ここから映像はよどんでしまい、満島ひかりの登場までだらける。しかし、その後も、どうにもよどんだ流れは、あっちへ流れこっちへ流れ、結局、お母さんの誕生日プレゼントのための万引きが物語を転換させ、ラストのライブシーンで盛り上がって終わる。のだが?

結局、石井克人のワークショップの参加者が演出した部分が多いようで、素人映画で終わるのが残念な物語。作りようによれば生き生きした子供映画になったろうに。お金を取る作品じゃないね。


「早熟のアイオワ
ジェニファー・ローレンスクロエ・グレース・モレッツが出演する2007年の堀出し作品ですが、これが、以外とレベルの高い作品でした。監督は、女優でもあるロリ・ベティで、彼女の自伝ストーリーでもある。

物語は、ポーカーハウスという売春宿のような家で暮らす三姉妹の物語。一番上の姉アグネスをジェニファー・ローレンスが好演し、末娘のキャミーをクロエ・グレース・モレッツが演じる。

三人の姉妹の一日の行動をカメラは横にパンしたら次女の話、三女の話と画面を転換し、中心であるアグネスの話をストーリーの軸にして展開していく演出はなかなかのものである。

男とドラッグと酒におぼれる母親を見ながら、妹たちを守るためにしっかりといきるアグネス。友達の家に追いやられ、新聞を配ったり空瓶を集める次女、バーで時間つぶしをしながらジュースを飲み、バーの妙な男の相手をする三女。それぞれが、それぞれにキュートで魅力的に描かれている。

ジェニファー・ローレンスもまだまだ若いが、その演技は非常にしっかりしているし、クライマックス、母親の愛人にレイプされ、どん底につき落とされるも、がむしゃらに、バスケットボールの試合で奇跡のように得点してチームを勝利に導くところまで、さすが見せてくれる。

次女を演じた女優も、ずんぐりした存在感が実にかわいいのだが、さすがに、その後大成はしていないようですね。

クロエ・グレース・モレッツは、さすがに10歳となると、かわいいというか、ちっちゃい感じが実にキュート。後に「キック・アス」などで大ブレイクする以前の彼女が見られるだけでも必見である。

一日の物語を、実にシンプルな演出の中に、魅力あふれる人物を登場させ、描き分けたロン・ペティ監督の力量は、評価してしかるべき一本で、なぜ今までミニシアターであれ輸入されなかったのか不思議な作品でした。


ダラス・バイヤーズクラブ
今年のアカデミー賞の有力候補の一本で、今まさに旬のマシュー・マコノヒー主演の実録ドラマである。監督はジャン=マルク・バレ

実話ではあるが、シンプルな展開の中に、アメリカの医薬品承認の実体を、HIVの治療薬認可の問題を題材に、ただのメッセージ映画にとどめず、しっかりとした人間ドラマとし、さらに、ストーリー性にも十分に配慮された作品として完成されている。

完成度が非常に高いというのが、この作品の特徴であり、その意味では、なかなかの秀作で見応えがある。しかし、個人的にHIVや薬害の問題、さらにゲイも当然絡んでくる中では、好みのジャンルではないのが正直なところであり、この作品より、完成度の落ちるもののアカデミー賞候補作品なら「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の方が好みといえば好みです。

物語は、ロデオ会場の片隅で、いまにも会場でその演技を見せようとしている選手を見つめる主人公ロンの姿から始まる。女を抱き、下品ながらも欲望に任せるロンのショットが挿入される。

そして、なにやら悪どい賭をしていたようで、思うように行かなかったために客に追い回されるところを知人の警官に助けられる。

程なくして、突然気を失い病院で目覚めたロンは、HIV陽性で後30日しか命がないと宣告される。受け入れられないロンは、様々な手段で世界中にある治療薬を見つけ、病院へ行くが、承認されていないということで、使えない。それならと、違法に入手した治検薬のAZTという薬を入手、用いたところ、30日の余命が、三ヶ月後も生きていた。しかしこの薬には副作用があるということで、メキシコに飛び、さらに別の薬を手に入れる。やがて、その未承認の薬を、「ダラス・バイヤーズ・クラブ」という団体を作り、安価でエイズ患者に与えるようになる。

当然、司法の取り締まりも入ってくる。

しかし、30日の余命は、6ヶ月から数年とどんどん延びるのである。

ロンの相棒となるレイヨン役のジェレッド・レトの存在感が抜群で、もちろんマシュー・マコノヒーもくせ者だが、この二人の物語が、一見、面倒な未承認薬に対するメッセージになるところを、しっかりとした人間ドラマにとどめ、終盤でレイヨンが死に、やがて、裁判で負けたものの、ロンは自分には未承認の薬の個人使用が認められる下りは、なかなか胸に訴えてくる。

最後は、ロン自らがロデオを演じるカットでエンディング。

優れた一本であるが、好みではないという意味では、アカデミー賞に押したくはない。でも、ジャレッド・レトはすばらしかった。