くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「もぐら横丁」「母のおもかげ」「エージェント・ライアン」

もぐら横丁

「もぐら横丁」
最初は、時代を感じさせる貧乏臭い話かと思うのですが、物語が進んでいくと、どんどん、せりふの掛け合いのリズムと、軽快な展開のテンポに引き込まれていく。しかも、いつになく動きの早い清水宏得意の横のパンや、縦の構図も秀逸という、コメディ映画の秀作でした。清水宏と共同で書いた吉村公三郎の脚本が素晴らしいのかもしれません。

物語は、貧乏小説家緒方とその妻で、陽気で前向きな妻の物語。その日の生活費もままならず、質に入れる物もない上に、家賃もたまっている。そんな中で、けなげに明るくいきる二人をとっても明快すぎるタッチで演出されていく。

ある日、今の下宿が立ち退きになり、まずは、出産のために病院へ。ここでの会計係のおじさんとのコミカルなタッチも楽しく、さらに、ここも追い出されて、もぐら横町なる下宿屋へと行ってからの本筋の展開も、絶品で笑わせてくれる。

次々と、入れ替わる登場人物達の軽妙そのもののせりふや行動の秀逸さに、とぼけた風情の緒方の夫、お気楽な妻の漫才のようなつっこみも見事。

やがて、子供の病気から、乗り切ったと思ったら芥川賞に輝く終盤へ一気に駆け込んでいくラストは、よけいな引き延ばしを無視した脚本のうまさに恐れ入ります。そして、二人は、繁華街へ繰り出し、人混みの中、仲むつまじいショットを交えてのエンディング。

舞台劇を見ているような小気味よい展開が見事なコメディ映画の傑作でした。


「母のおもかげ」
みていないと思って、再見してしまいましたが、清水宏監督作品をまとめ見したあと、見直してみると、この作品、ものすごい名編だと改めて感動してしまいました。

脚本のせりふの数々が、実によく練り込まれているし、横に移動するカメラも見事にストーリーの中で生き生きしています。それだけでも、見直して、正解だったと思います。

全く、子供を描かせると、絶品と呼べる清水宏監督の演出、さらに、母を演じた淡島千景の演技も見事なものがある。やはり、名作と呼べる作品は何度見ても、見入ってしまいますね。今回も、ラストシーンは涙ぐんでいました。


「エージェント・ライアン」
とにかく、素直におもしろいの一言である。冒頭からラストシーンまで、駆け抜けるようにストーリーが突っ走る。細かいカットを編集でつなぎあわせるスピード感と、絶妙な移動撮影、さらに、これでもかと練りこまれ、組み立てられたストーリー構成の妙を堪能することができます。脚本に加わったデビッド・コープの力量が発揮されている気もします。

監督はケネス・ブラナーですが、この人こんなハイスピードな演出だっただろうかと、一瞬考えてしまうほどに、すばらしいサスペンスアクションに仕上がっています。

映画は大学に通う主人公ジャック・ライアンが、テレビでニューヨーク9・11テロ事件を目撃する日に始まり、その後、学校を辞めて海兵隊に行き、そこでヘリコプターに乗っているときに攻撃され、瀕死の重傷の後、退院、そこで知り合った医学生と恋仲になる。一方、ジャック・ライアンに目を付けたCIAのハーパーが彼を引き込んで、アナリストとして採用。ロシアの企業が企てているドル暴落による世界恐慌と、テロを阻止するべく、ジャックをロシアに派遣し、ロシア企業の計画を阻止するという内容である。

経済的な用語も若干でてくるとはいえ、必要以上にこと細かいところまで踏み込まず、しかも、スピーディーなアクションシーンも、無駄な引き延ばしを入れずに、危機に陥っても、さらりと次の展開へ進んでいくスピード感のうまさは絶品。

フィアンセのキャシーを巻き込み、ロシア企業の機密を盗む中盤までのサスペンスフルな展開も、実に鮮やかで、爽快、そしてそこから、その具体的な計画を阻止するクライマックスまでのカーチェイスを含めた頭脳戦、情報戦、ITテクニカルな設定もすばらしい。本当に息をつかせない。

編集のうまさがとにかく、絶品の一本で、一級品のエンターテインメントだったと思います。