くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ワンチャンス」「ウォルト・ディズニーの約束」

ワンチャンス

「ワンチャンス」
とにかく、リズムセンスが抜群にすばらしい映画です。「プラダを着た悪魔」もすばらしかったのですが、このデビッド・フランケルという監督は、このリズムセンスが見事ですね。

この映画の主人公ポール・ポッツは、オペラが大好きな青年である。そして、そのオペラで成功する物語なので、当然、オペラの名曲がずらりと流れる。しかし、その合間に挿入されるポップな音楽、歌声もまた実に見事に物語にマッチして、抜群のテンポを生み出していくのです。

さらに、この映画、主人公の周りの人物のキャラクターもとってもうまい。ポールの母親で、ちょっと気の強いところのある古きアメリカンマザーという感じの女性や、父親で、昔アメフトをしていたコテコテ体育会系筋肉マンが、これもまた、一昔前のアメリカンファーザーのごつさがある。そして、ポールがつとめる携帯電話ショップの店長ブラドン、その恋人もまたいい味を出しているし、ポールの恋人ジュルズの祖母は、いかにもイタリアン系のぶっ飛び女性だったりと、とにかくわき役を見ていても楽しい一本なのです。

映画は、一人の少年ポールが教会の合唱団でしょうか、その中で歌っている。しかし突然倒れて、実は中耳炎で。といういきなり彼の不運なアクシデントのスタートが語られる。そして、絶妙のカットつなぎで、いじめっ子に追いかけられるカットを繰り返して、ポールが青年になるまでの時間が流れる。

とにかく、映像テンポも最高で、ここから、恋人ジュルズに、ブラドンが勝手にデートのメールをして、そのままポールとジュルズが出会い、そして、町でポールの母親とでくわしたところから、ポールの家に招かれ、そしてあれよあれよと交際が発展。

オペラ好きなポールは、尊敬するパヴァロッツィの学校へ行くべくお金を貯め、ベニスに行くが、パヴァロッツィの前で歌うときに緊張して声が出ず、パヴァロッツィに酷評され、落ち込んで、父親の精錬所で働く。

しかし、夢をあきらめられず、かつての合奏団の先生の薦めで「アイーダ」の主役をすることに。しかし前日、盲腸炎になり、それでも無理矢理に出演して倒れ、今度は甲状腺に腫瘍が見つかる。

一度は歌手をあきらめたが、携帯ショップで、つい口ずさむと、歌えることがわかり、有頂天になって自転車に乗って帰って来るところで、車にはねられるという、二転三転の運の悪さ。

若干、このあたりがよどむように思わなくもないのですが、その後、最後のチャンスと、タレント発掘番組に出演し、その優勝を機に、とうとう、オペラ歌手として大成、現在となるという物語である。

何度も書くが、ストーリーのテンポが抜群によく、わき役を含め、登場人物の描き分け、キャラクターの演出も楽しいし、なんといっても、音楽が抜群の一本。クライマックスの、タレント発掘番組で歌いきったポールの姿を見る、ブラドンや、ポールのことをことあるごとに叱咤していた父親が拍手するシーンは涙があふれてきます。

期待していなかっただけに、本当に、すばらしい映画に出会った気分です。良かった。


ウォルト・ディズニーの約束
非常に丁寧に書き込まれた脚本を、きっちりと押さえて演出していったという、しっかりとした作品でした。
監督はジョン・リー・ハンコックです。

物語は1964年の名作「メリー・ポピンズ」の制作秘話という形を取っています。それも、原作者P・L・トラバースとウォリト・ディズニーのお話。

映画化に当たって、原作者のパメラ・トラバースの強行的な意見を受け入れながら、いかにして映画完成にいたるかという人間ドラマで、パメラ・トラバース(実は本名ヘレン)の少女時代の、大好きな父親との物語を交互に交えながら、なぜ、パメラが執拗なほどにメリー・ポピンズを守ろうとしたのかという心の変化をとらえていく。

イギリスの風景、そして、当時のアメリカの風景が非常に美しいカメラでとらえられ、幼き日、いつも夢を見ているような父親の姿に曳かれ、慕う、幼い頃のパメラの物語が、現代の映画化に伴う脚本や、音楽の制作の中での彼女の言動に交互して映し出される。

最初は、かなりいけ好かない女として徹底的に演じるエマ・トンプソンの演技がすさまじく、正直、ここまでならもういいやろとさえ思わせられる。とうとうイギリスに帰ったパメラをうウォルトが次の飛行機で追いかけ、そして、映画化を承諾させる。

前半が強烈なために、パメラが徐々にその本当の気持ちを見せ始める下りが、やや唐突に見えなくもないが、それでも、クライマックスの完成披露試写会のシーンでは、パメラ同様、胸が熱くなってしまいました。

素直なラストシーンへ、何のこだわりもなく演出していったためでしょうね。

見終わっても、本当に良い映画を見たという感じで、なんか、すごく得をした気分になる一本でした。、