くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ルパン三世 カリオストロの城」「ソウル・フラワー・トレ

ルパン三世カリオストロの城

ルパン三世 カリオストロの城」(デジタルリマスター版)
何千本という映画を見てきたが、本当に好きな映画というのは一握りである。そんな作品の中の一本がこの映画。ヒロインクラリスに一目惚れして約三十数年、今回久しぶりに見直したこの映画、やっぱり胸が熱くなった。そして、ストーリー展開のスピーディさ、見せ場の連続とハイテンポな映像のリズムに改めて、この映画のすばらしさを再認識しました。

もちろん、ヒロイン、クラリスの可憐なかわいらしさは、何度見ても男心をキュンとさせてくれました。

場面場面一つ一つ、ほとんど覚えていましたが、今回、そのストーリー構成のうまさもさることながら、画面の構図が大胆に大きく動いていく。実写ならカメラワークというところですが、アニメならではの、自由奔放に移動する映像が、本当に映像に躍動感を生み出していきます。
宮崎駿の演出の力量のたまものですね。

さらに、一つ一つのせりふが実に粋で、的を射たところに挿入され、物語を決して退屈させない。そして、主人公のルパンを、テレビシリーズのキャラクターの個性を大切にしながらも、非常に人間味あふれる、いや男気あふれる人物として描いている。対するヒロインのクラリスは、あまりにも純粋で可憐な描き方を徹底することで、好対象な存在感を生み出して、スペクタクルな物語に、切ないほどのドラマを作り出していく。

もちろん、アニメーションのテクニカルな部分は、技術が進歩した現代のアニメ技術よりは劣るかもしれないが、根本的な完成度の高さは、今なお随いつの出来映えであり、アニメとしても、ドラマとしてもすばらしい傑作だと思います。本当にいい映画ですね。


「ソウル・フラワー・トレイン」
自主映画でもあり、それほど期待していなかったが、主演が平田満と、しっかりした俳優を使っていたので、おもしろいかもと思い見に出かけた。評判もそれなりにあり、アンコール上映でもあったからです。

確かに、映画がリズムに乗っています。しかも、ネオンや光を使った画面作りもしっかりとしていて、作品がちゃんと映画になっているというのが、最大の見応えでしょうか。

背後に流れるピアノ曲を含め、音楽に映像が被さって、うまくまとまっているのも見事でした。

大分の田舎の家、主人公の父親天本が、大阪でバレエの勉強し、一人暮らしをしているとおもっている娘ユキに会いに行くところから映画が始まる。一方、茶髪のいかにもはすっぱな女の子あかねが、真っ赤なトランクを曳いて大阪に向かう物語が交差してくる。

同じフェリーに乗り、天本は妙な男に親しく話しかけられ、いいように財布を盗まれている。それを見ているあかねが、港でスリ返し、天本に何気なく返す。こうして二人は大阪の町をあかねの案内で見物する。

通天閣、串カツ、将棋クラブを見回り、最後にストリップ小屋へ。新世界を中心にしたロケーションは、さすがにコテコテの大阪を描写していきますが、テンポのよい音楽だけでなく、静かな曲も交え、映像のみでなく、音楽もリズム感あふれる感性で描かれていく。

ストーリーは非常にコミカルで、軽いタッチなので、飽きることはなく、そのあちらこちらに、何気ない素朴なドラマが描かれる様が実に心地よい。

天本はあかねにつれて行かれたストリップ小屋で、花電車というショーを見せられる。その説明はここで書きませんが、ストリッパーがそのプライドを示すショーだ、という説明がかぶる。

ようやく、娘のユキに会ったが、どこか、隠し事をしているようである。たまたま押入から出てきたおもちゃは、さっきストリップ小屋でみた、ダンサーの使っていたおもちゃに似ていたりする。

一方、あかねはストリップ小屋で照明のオペレータの若者と、さりげない恋仲のようであり、また、あかねはユキのストリップを見たことがあると天本に白状する。

あかねは、大阪でホームレスで死んだ父親の遺骨を引き取りにやってきたというドラマも一方で展開。

二つの話が、何気なく、絡み合って、それでも交わることがないのだが、どこか、父と娘というメッセージで微妙なオーバーラップする終盤も、とっても暖かいドラマを生み出してくれます。

ユキがストリッパーであることを知った天本は、ユキの花電車のショーを見に行き、ユキを励まし、やっと、ユキと父親は素直に向き合うことができる。あかねは、若者からプロポーズされ、一緒の家族になることを決心する。

家族、父と娘、さりげない、素朴な人間の物語が、実に素直に、それでいて、テンポのいい映像のリズムで語られる様は、美しいファンタジーでさえもある。父が娘の部屋で寝ているときに、チンチン電車に乗る夢のシーンは、ちょっとシュールだが、どこかほのぼのした演出効果も生みだしてきます。

人物にくっきりとピントを合わせ、背景を、思い切り色彩だけが見える程度にピンぼけにしたカメラ演出も美しい。

本当に、ミニシアターでお目にかかる程度の作品なのだが、一見の価値のある一本だったと思います。