【旅情」
寡作で知られた、デビッド・リーン監督の名作の一本を見ることができました。
さすがに、ロマンティシズムあふれる見事な作品で、これが映画というものだと迫ってくる。
物語は、アメリカから一人旅でベニスにやってきたジェーンと、ベニスで知り合った古物商を営むレナートとのひとときのラブストーリーである。
映画は、汽車に乗ってジェーンがベニスにやってくるシーンに始まる。ハンディフィルムカメラであちこちを写しながらも、周りにはカップルや夫婦連ればかりで、次第に孤独になっていく。そんな彼女は、ある日、カフェでレナートに出会う。
最初は、ほかのイタリア男同様に調子の良いだけかと思っていたが、いつの間にか心が引かれていき、デートを重ねる。しかし、ある夜、彼には妻子がいることを知る。しかし、ジェーンの心はとどまることができずに、しかし、やがて、帰国の日がやってくるというもの。
確かに、ストーリーは、今となっては古いといわざるを得ないが、映像づくりが徹底されているのに恐れ入ってしまう。
一人旅で回っている頃のベニスのショットは実にシンプルで、素朴な画面が多いが、レナートとデートを繰り返し始めたあたりから、とたんに色彩を取り入れた画面や、美しい情景をとらえたショットが多くなる。
さらに、小道具の使い方もうまい。最初はカメラを手放すことなく、回していたジェーンだが、レナートに夢中になり始めると、いつの間にかホテルに忘れてくる。
単調になりそうな物語にリズムを生むのが、調子良く商売をしたり、まとわりついてくるマウロという少年。彼の存在が、中盤の展開を引っ張って行くし、ラストシーンを盛り上げる。これが映画の作り方である。
そして、有名なラストシーン。汽車が動き始める。ジェーンはレナートの姿を探すが見えない。やがて駆け込んでくるレナート。手には包みを持っている。やっと追いつくかという所で間に合わないレナート。持っていた包みは、かつてデートの時に運河に落とした一輪の花と同じ花である。これが映画作り、映像づくり、ストーリーの締めの醍醐味である。
彼方へ去っていく汽車。手を振るジェーン。ひとときのアバンチュールの終演は、まさしく大人の恋である。これがラブストーリーなのである。やはり、名作とはこういうものだと、改めて納得してしまいました。
「クロードEXPLODE」
元来、この手のお話は嫌いである。したがって、このシリーズも前作まで一本も見ていないのですが、今回、プロの俳優を目指している知人が出ているということで急遽見に行きました。監督は豊田利晃なので、実力がない人でもないので、見て損はないとも思ったからです。
物語は、原作のコミックがあるので、そのとおり、不良グループが喧嘩でしきっているふたつの高校の話に、地元やくざのからみや、かつてその高校にいた青年が少年院から出所してきてのからみ、などなどが細かいエピソードに散りばめられている。
冒頭、美しいモノクロームのシーンに主人公が孤児院へ連れてこられるところから、物語は現代へ。別にそれほどの人間ドラマにはこだわらず、いきなり高校の中での喧嘩三昧の展開が始まる。
目新しい演出もなく、といってそれほど飽きるような間延びもなく、普通にストーリーが進んで、よくある展開から、よくある終盤へとつながる。
不良グループの闘争のシーンに一人も女性が出てこないというのが特徴といえば特徴の絵である。
まだまだ原作が続く中で、それなりに今後を予感させて終わるエンディングである。
主演を勤めた東出昌大がなかなかの男っぷりで、二枚目。それなりの存在感で早乙女太一を凌駕する。これから期待の若手という感じである。
あとは、どっちがどっちの高校のグループかわからないし、結局知り合いの彼も見つからなかった。普通の映画でした。