「ホットロード」
宣伝を見ているときから、大した映画ではないなと思いながら、能年玲奈を見たいだけで見に行った。
予想通り、大した映画ではなかった。まず一つに、原作の背景にある暴走族、不良という存在に、もはや時代の差を見ざるを得ないこと。そして、主演の二人の周辺に配置した外堀的な存在の脇役が実に弱い。結果、主人公の二人が浮き上がることなく、全体のストーリーの中に埋もれてしまったままラストシーンまでいく。
この部分の脚本の弱さ、演出の弱さが、結果的に、何のとらえどころもない映画に仕上げてしまったのかと思うのです。
監督は三木孝浩である。
映画は、今時、普通になっているとはいえ、原作当時はまだまだ珍しかった、男好きの母親と二人暮らしの主人公和希が、友達に誘われて、暴走族の青年青山と出会う。そして、お互い牽かれあい、恋に落ちる一方で、暴走族同士の抗争が絡んでくる。
かなりレトロなストーリー展開だが、それはそれで、時代の色を徹底的に描けばそれでよかったのである。純粋なラブストーリーとして徹底すればよかったのだが、テンポの取り方も悪いし、それぞれのエピソードが全く引き立ってこない。
和希の境遇の悲しさもでていないし、暴走族という存在の中でのそれぞれの切なさむなしさもでていない。どれもこれもが平坦なストーリーの中に埋もれ、漂うだけになっているのである。
ラストシーンも、かなり無理のある、といってこれというわけでもなく春山が事故に遭い、それにショックを受けた和希も死の直前まで弱り、しかし、ふとしたきっかけで立ち直り、春山は半身不自由ながら未来に向かって和希と進むシーンでエンディング。
何とも全体に弱いのである。平凡すぎる平凡なラブストーリー。能年玲奈は、本来の得意キャラを押さえて、必死で普通の少女を作ろうとしていて、それがまたよくない。とはいてもかわいいね。
こんな普通の映画ではなくて、はじける役柄をした方が良いかと思います。
映画としては、能年玲奈の人気だけを頼りに企画した作品という感じで、その能年玲奈がキャラクターを作らざるを得なかった無理強いが失敗に終わった一本という感じです。
「ソウォン 願い」
韓国映画にしては、非常に毒が少ない出来映えの一本で、その毒々しさがない分、非常に普通の映画になった。
現実にあった暴行事件を題材にし、その告発映画の様相で始まるが、映画が動き出すのが、事件の後、カウンセラーの女性と被害者の少女ソウォンとの交流、さらに男としての父親を遠ざけるようになった娘に、着ぐるみをかぶったりしながら、必死で愛情を見せようとする父の姿、周辺の人々の温かい心、ソウォンのクラスメートたちの心遣いなどが描かれる中盤の部分である。
軽いタッチの曲で描かれるこの部分を、もっと中心にいて描けば、普通の告発映画ではなく、視点のおもしろい良い映画になったと思うのですが、父と娘が再び理解し、仲直りしてからもう一度裁判場面に引き戻したために、結局、事件の告発部分と、被害者とその家族の再生部分が完全に二極化してしまった。
結果として、普通の映画として終わったのが本当に残念。
監督は「王の男」のイ・ジュンイクである。