くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マルタのことづけ」「ボーグマン」

kurawan2014-10-27

「マルタのことづけ」
一見、どこにでもある物語なのだが、不思議な感動を生み出してくれる。そこにあるものは、心に直接訴えかける主人公マルタのひたむきな最後の生き方なのかもしれません。

物語は、一人の少女クラウディガがベッドで目覚め、おもむろにシリアスを食べ、スーパーの仕事にたつ姿に始まる。ほとんどせりふのない導入部で、それがクラウディアの孤独感を際だたせて描写する。

ある日、突然、路上で腹痛に見回れ、病院へかつぎ込まれたクラウディアは、そこで隣のベッドにいるマルタと知り合う。マルタはHIVで、彼女の周りには四人の個性的な子供たちが騒がしいほどにまとわりついている。

ただの虫垂炎だったクラウディアは、手術の後マルタの家に食事に招待される。そこで、最後の命を一生懸命子供たちとすごそうとするマルタの姿と、必死で明るく振る舞いながらも母に尽くす子供たちの姿を見て、いつしかクラウディアも彼らと行動をともにするようになる。

もちろん、物語はラストはマルタの死であるが、その場面は描かない。死の直前、マルタはみんなを連れて海に出かける。自分の体の苦痛も極限に近いが、必死で子供たちとはしゃぐマルタの姿を見て、クラウディアは愛というものの姿を知る。

マルタの死後の灰は町中に撒いてほしいという遺言絵、車から撒くシーンの後、それぞれの子供たちへのマルタの言葉が流れる。もちろんクラウディアにも「これからも子供たちと一緒にいてね」と告げるのである。

シンプルな物語だが、訴えかけるメッセージは非常に心がこもっていて暖かい。不思議な作品だったかなと思います。


「ボーグマン」
シッチェス映画祭の一本、しかもグランプリ、として見に行った。しかも、あちこちの映画祭で話題の一本となれば、気にしないわけにいかない。

正直、シッチェス映画祭の作品と思えないほどの普通の映画だった。ある意味、普通すぎて、がっかりという感じ。

映画が始まると、何やら男たちがめいめい武器を持って、森の中へ何かを狩りに行く。森の中の地面の中に男が隠れていて、どうやらその男たちを狩るのだ。隠れていた浮浪者のような男が、脱出し、森の中の大邸宅にやってきて、その家庭にどんどん入り込んでいく。

仲間も数人いて、ためらいもなく人を殺し、巧みに洗脳し、訳のわからない手術などを施し、どんどん家族を引き入れていく。

時々、この男たちの化身かと思えるように、犬が徘徊したり、どこかシュールなショットも散りばめられているから、戸惑ってくる。

子供たちをそそのかし、子守の女性も取り込み、庭師も殺し、最後は夫婦も殺してしまい、子供と子守りを連れて、出て行ってエンディング。

途中、舞台を作って、芝居をするシーンや、冒頭のテロップで、まるで、彼らが宇宙人であるかのようなテロップもあり、かなりの不条理劇である。

結局、冒頭の狩りの意味も、地面に隠れていた経緯も不明のまま、おわってしまう。

オランダの映画である。別に、独特のカメラワークがあるわけでもない。謎だらけというのが、批評家たちに評価されたという一本だろう。面白い作品だが、シッチェス映画祭らしくない一本だった。