くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブルー・リベンジ」「マッド・ナース」「バリー・リンドン

kurawan2015-04-08

「ブルー・リベンジ」
今回の未体験ゾーンの映画祭で一番の話題作。確かに、シンプルなストーリーとよけいな説明や背景を排除した展開は映画としてよくできた一本だったし、眠くもならず楽しめた。後は、こういうストーリーが好みかどうかという話である。

映画は一人の男が風呂にはいている。なにやら家族が帰ってきたのであわてて飛び出す。この男ホームレスで、他人の家で体を洗い、ぼろぼろの車のなかで生活している。彼が主人公ドワイトである。

両親を惨殺された彼にある日、その犯人が釈放されたと警官から通知が届く。そこで、彼はその男を殺すべく、車にガソリンを入れ、バッテリーを乗せ、準備を始めて、車を走らせる。まるでハードボイルド映画のような導入部である。

導入部で、犯人を刺し殺すが、その男の家族が当然ドワイトを追ってくる。しかも、ドワイトが乗って逃げた車に一人の青年が乗っていて、去り際に、あれはぬれぎぬだったとつぶやいて去る。

話は、ひたすら、ドワイトとその家族との復讐合戦で、ドワイトが、自分の会ねサムがターゲットにされないように、転居させ、対峙する。そして、兄を拉致し、実は真犯人は犯人の父親で、ドワイトの母の元夫で、寝取られたことで殺したことを知る。

そしてドワイトは高校時代の友人から銃を手に入れ、最後の決戦に望む。

丁寧な演出と、最後まで手を抜かない脚本の完成度の高さ、細かいエピソード積み重ねのうまさで、なかなかのクオリティの作品に滋賀っている。

ドワイトは、犯人たちの家で待ち伏せ、銃撃戦の末、全員が死亡、物語は幕を閉じる。最後に、冒頭の青年が、ドワイト等の父親の子供だと教えると、彼はゆっくりと夜の闇に去っていく。

それなりのクオリティを備えた一本で、一級品というよりB級映画の佳作というイメージの映画だった。


「マッド・ナース」
ここまでふざけた映画もないものだ。しかし、このふざけきったすっ飛び感が、好感に変わる一本だった。おもしろくないかといわれれば、ぜんぜん退屈しなかったのだから。

まず、この映画はサイコホラーである。しかも、正常な人間から描くのではなく、殺人鬼側から描いているのが、妙に明るく見えてしまうのだ。だからおもしろい。

映画は、いかにもセクシーに見せているが、どこか不気味に醜い主人公アビーのナレーションで始まる。ほぼ裸に見える服を着て、夜の町で、隙あらば浮気しようとする男をてだまにとり、メスで動脈をさして、屋上から着き落とす。つまり私は正義の味方よというオープニングがなんとも爽快。

物語は一流病院の看護士としてつとめるこのアビーの物語。新人で入ってきたダニーを仲間にするべく、夜の町で、酒を飲ませ、男と寝させ、写真を撮る。このあたりから、このアビーが尋常ではないと思い始める。

そして、アビーにつれなくし始めたダニーを執拗に罠にはめていく。その上、そんなアビーに疑いの目を向けた周辺の人物を次々と殺し始めると、もう完全にサイコホラーだ。

新人の人事部長を殺し、ダニーの義父も殺し、敵と見なすと、色仕掛けで近づいて、殺して、他人に罪をかぶせていく。

実は、彼女は幼い頃に父親を殺し、その後、精神的に問題があり、心療院に入れられていたが18歳の時に逃亡したことが、ダニーの調べでわかる。そして、偽名で今の看護士となり、殺人を繰り返していたのだ。

しかし、そのダニーも殺され、彼女を疑った人物をことごとく殺して、この都市を去り、次の病院で、人事部長として赴任して映画はエンディング。

まさに、こちら側からはいっさい描いていない。だからサイコホラーであるにも関わらず、どこか明るい、どこかハッピーエンドに見えてしまうのだ。なんとも、痛快なあきれたおふざけホラーだった。


バリー・リンドン
史上もっとも美しい映画、私の見た映画の中でももっとも美しい映画。美しい映画といえば「バリー・リンドン」。30数年ぶりに見直したが、やはり美しかった。デジタルになったことに不安があったが、やはり、あれはフィルムの美しさである。フィルムだからこそ、自然の色彩すべてを記録したのだろう。そこまでいえる一本だった。

しかも、完璧に近い構図と、計算され尽くされたカメラワーク、それに映像リズム、音楽センスのすばらしさをあらためて再確認できました。

さらに、毎回、少々眠くなるストーリー展開も、今回は最後まで引き込まれてしまいました。やはり、傑作と呼べる一本でした。

光が、常に自然のままに被写体の半分を照らしている。そして、有名なろうそくの明かりの淡い、暖かみのある映像、赤や、グリーン、ブルーなどを見事に配置した色彩、彼方に流れる雲の姿まで、計算の上に配置した画面、全く、映像美学を駆使したとはこのことですね。

デジタルカメラでは絶対に記録できない本物の光を感じたような気がしました。これが映画です。