くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・ゲスト」「トワイライト ささらさや」

kurawan2014-11-13

「ザ・ゲスト」
とにかくおもしろい。久しぶりに、理屈なく楽しめる一本に出会った気がします。監督は「サプライズ」のアダム・ウィンガードです。「サプライズ」は前評判ほどおもしろくなかったので、ちょっと不安でしたが、なんの、オープニングからどんどん引き込まれていきました。

一人の青年がまっすぐな道を、画面奥に走っている背中のカット、突然のハロウィンのかかしのアップでタイトル。

カットが変わると、イラク戦争で息子ケイレブを亡くして悲しみに暮れている母ローラのアップになる。

父スペンサーが出かけ、弟ルークも学校へ行った後、玄関にデイヴィッドが現れ、ケイレブと同じ部隊で友人だったと告げる。悲しみのどん底のローラは彼を招き入れ、是非泊まってくれと懇願、さらに妹のアナも紹介するが、アナはどこか疑心暗鬼。

何の疑いもなくすんなり招き入れるローラはあほうかいな?と最初は思うが、息子を亡くして、寂しいどん底の彼女の心の透き間に付け入った感じだろう。さらに会社のことで不満のある父スペンサーにも取り入り、アナにも少なからず恋心を呼び起こすデイヴィッドの行動もまた不気味ななのである。

しかし、明らかにこのデイヴィッドが不審人物だろうと私たちは、その正体の謎を解くべく物語を追いかけ始める。この導入部がうまい。

さらに、ルークが学校でいじめられていると見抜いたデイヴィッドは、ルークをいじめている級友をバーでやっつけてしまう。その手際よさが爽快なほどにスピーディなので、まるでデイヴィッドがダークヒーローに見えてくるのだ。

しかし、ある日、アナが、デイヴィッドがなにやら医師に電話しているのを聞いてしまい、さらに、アナの友人のクレイブがデイヴィッドと知り合った直後、殺されたらしいと知って、不審が頂点に、そして、軍に問いあわせたとたん、軍の検索画面に「緊急にKPGへ連絡」とでる。にわかに殺気立つ軍とKPGなる組織の黒人の少佐が、傭兵を引き連れてデイヴィッドのもとへ向かう。ここからあれよあれよと、よくわからないが、ミステリアスでサスペンスフルな展開でスピードアップしていくのだ。

実は、デイヴィッドは軍の秘密実験の被験者で、自分と軍を守るためにプログラムされた人間だと明らかになる。
デイヴィッドは自分を守るために、スペンサーとローラも殺し、追ってきた少佐の部下を一網打尽にする。

少佐はアナと学校でハロウィンの準備をしているルークを助けるべく急ぎ、それを追ってきたデイヴィッドとハロウィンパーティの迷路の中での対決となる。

少佐もやられてしまい、すんでのところでアナがデイヴィッドを撃ち、ルークがナイフを突き立てて倒すが、救急車に乗せられたルークとアナの前を、消防隊員にばけたデイヴィッドと目があって暗転。まるでホラー映画のラストである。

イタリアンホラーでよく使われた音楽の使い方と、リズム感あるメロディにのせて、テンポよくサスペンスが展開。細かいカットの連続と小気味よいエピソードの組立、さらに実験の説明などよけいなことをすべて排除し、アクションヒーローのようなキャラクターで悪魔のような男を描写した脚本がうまい。

ラストは、予想できるエンディングで、ハロウィンの日を舞台にするという、かつての名作ホラーへのオマージュのような設定も楽しい。本当におもしろい映画に出会いました。


「トワイライト ささらさや」
単純に泣いてしまいました。まぁ、こういう映画では泣ければいいのだと思います。監督は、ちょっと、好きな深川栄洋です。

俯瞰でとらえる風景場面をジオラマ加工したものか、元々ジオラマのセットを作って撮影したのかわかりませんが、そういうファンタジックな世界として演出していきます。

冒頭で、ユウタロウが死んだ葬式の場面から、ユウタロウの父親が、孫のユウスケを引き取るためにやってくる。そこで落語の師匠に乗り移ったユウタロウが、サヤと子供を逃がして、ささらの町にやってくるところから物語が始まる。

なんで、とかいう理屈をすっ飛ばして、ささらのまちで、暖かいムードの年寄りに出迎えられ、友達ができて、時折乗り移ったユウタロウが、サヤに話しかけるほのぼのした物語を中心にするが、乗り移れなくなるまでの展開が結構早いので、この後なにが?と思っていたら、父親が子供をさらいにくるあたりから、物語の中心がぶれてしまう。

ユウタロウと父との親子の話が中心になり、作品全体のテーマが、サヤとユウタロウのラブストーリー的なものから、普遍的な親子の物語へ移るのがちょっと気に掛かる。原作があるので、どうなのか不明だが、この中心のテーマのぶれがこの作品の弱さである。

とはいえ、泣いた。可もなく不可もない感動ドラマとしては、泣けたのだから良しとしよう。そんな映画だった。