くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「6才のボクが、大人になるまで。」

kurawan2014-11-14

一人の少年の6歳から18歳までの12年間を、同じキャストでとらえていったリチャード・リンクレイター監督のドラマである。いわゆる、12年間リアルタイムで撮影していった作品である。

とはいっても、しっかりとした脚本に乗っ取り、丁寧に絵作りしていったリンクレイター監督の演出力は、ラストシーンまでぶれることがなく、三時間足らずという長尺作品だが、それほどの退屈など感じさせなかったのはさすが。

少年時代のメイスン、両親は離婚し、時折、かつての父と過ごすひとときが楽しそうである。さらに、姉サマンサの存在もこの作品を暖かいものにしている。特に幼い頃のおませな姿が物語の展開にスパイスになるからいい。

やがて、母は再婚するが、アル中の夫に虐待され再び離婚、転居を繰り返す生活に反抗するメイスン。

そして、母は大学の講師の仕事に就き、物語はそれほどの劇的な事件はないものの、淡々と展開していく。

思春期を過ごし、初恋を経験し、やがて、高校を卒業する頃に、メイスンは写真家としての道を歩み始める。そして、大学へ進むべく、母の元を離れ、一人車を走る彼の姿でエンディングになる。

振り返って物語を思い起こすと、本当に普通の物語なのだ。無意味に暗い展開があるわけでもなく、といって、湿っぽい話が取り込まれているわけでもない。ただ、普通の一人の少年とその家族が、ともに12年間を過ごし、そして、次の生活に進むべく歩みだしていくまでの一瞬をとらえただけの作品なのだが、丁寧に演出されたストーリーと、美しい構図でとらえていく景色、人物、それぞれにとっても好感なのである。

たわいのない作品かもしれない。しかし、どこか心に残る、そんな一本でした。