くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ショート・ターム」「パワー・ゲーム」

kurawan2014-11-18

「ショート・ターム」
青春ヒューマンドラマの秀作、さわやかな感動の裏に、重い現代の闇が存在する深いメッセージも含んだ奥の深い物語に、強烈な充実感と感動を受け取ってしまいました。監督はデスティン・ダニエル・クレットンという人です。

ストーリーもさることながら、カメラが抜群にすばらしい。物語の舞台になる少年少女を対象にした短期保護施設ショート・タームを真正面からまっすぐとらえるカットから始まるオープニング、そこへ下手から自転車に乗った主人公グレースがフレームインしてくる冒頭が見事。

さらに、ドキュメントタッチの手持ちカメラで施設の中の様々な少年少女の姿をとらえるカメラワーキング、外にでたときにしっかりとしたオーソドックスな構図でとらえる外の世界の描写、クライマックスからラストシーン、飛び出した少年を追いかけるグレースたちのスローモーションによるラストシーンまで、重い物語なのに、軽快なカメラワークが、不思議な青春ドラマの様相を作品に与えている。

主人公グレースは、かつて父親の虐待でこの施設に入り、今はこの施設で、入ってくる18歳未満の少年少女の世話をしている。同僚のメイソンとは恋人同士で一緒に暮らしていて、実は妊娠している。

この施設に、大学を休学して一人のスタッフとしてネイトがやってきて、彼にメイソンが過去のエピソードを話しているファーストシーンに始まるが、同時に自殺癖のある少女ジェイデンが入所し、彼女の話を中心に周りの少年少女たちのエピソードが絡む。

やがて、グレイスの父が仮釈放され、一方、ジェイデンの父が彼女を引き取るが、実は虐待をしていたり、などなどの物語を経て、少しずつ成長し、前に進み始める彼らの姿でエンディングを迎えるのである。

手放しで、さわやかな青春映画とはいえない一本だが、この施設の少年少女たちの顔が、必死で、今の境遇を乗り越えようとし、少しずつ成長しようとする姿は、本当にピュアで美しいドラマではないかと感じいる。

青春ヒューマンドラマの秀作、この言葉がぴったりな一本だったと思います。


「パワー・ゲーム」
巨大企業のカリスマ経営者の権力争いに巻き込まれた、若き社員のサスペンスドラマなのだが、もったいない、というか、ストーリー展開が実に惜しいのである。せっかくの前半部分の重厚な導入部が、見る見る安っぽく、そしてラストにいたって、現実離れしすぎたスケールダウンで終わってしまう。残念そのものの一本だった。監督はロバーツ・ルケティックである。

いきなり、一人の青年が夜の町を走り抜けているシーンに始まる。何かから逃げてる風だが、これが、主人公の姿なのか過去にこういう境遇になってしまった男の姿なのか不明のままタイトル、本編へ。この導入はなかなかなので、期待に胸を膨らます。

巨大IT企業の社員アダムがなにやら携帯をたくさん広げてさわっている。つまり、彼は機械技術の天才だという描写。しかし彼は野心があり、今つとめているカリスマ経営者ワアットのようになるべく、画策している。

社長の前でのプレゼンで、堂々と社長を避難したために、即日でグループメンバーたちと首になる。

その夜、会社の経費のカードで豪遊して一人の女と知り合うが、翌朝、ワイアットに捕まって、ライバル企業で、かつてのパートナージョックの会社にスパイとして入れと命令される。もちろん、経費の不正利用への報復なのだが、ほとんど個人の生活などないほどの監視されてスパイ活動を行うアダム。

結果が遅いと、友人を殺されかけたりして脅される。そこへFBIが絡んでくる。

当然、流れとして相手のジョックもカリスマ経営者だから、そんなことはお見通しと、ラストでアダムを陥れる。

ここまではいい。しかし、年寄りたちに負けるものかと、アダムたちは、カリスマ経営者二人を逆に陥れ、FBIに捕まえさせて、さらに自分たちは自分たちで会社を興してエンディング。しかも最初に知り合った女性とキスをして暗転と、ストーリーがどんどんこじんまりして終わるのである。

だいたい、あれほどのカリスマ二人が、いとも簡単にラストでおとしめられるというリアリティの弱さ、脚本の練り足りなさが、非常に残念。しかも、メカの天才のようなアダムの描写なのに、ワイアットの監視に神経をすり減らすのも、ちょっと矛盾。

ラストで、どんでん返しするなら、もっと意表を突いた方法と、もっと引き込んでいく演出がないと、前半の展開をぶちこわしてしまう。しかも、ワイアットが、すぐに殺し屋
みたいなのを送り込むという安易さもストーリーを稚拙にしてしまっている。

よくある話はそれでいいが、オープニングがそれなりの懲り方だったので、その後続いていないのが本当に残念なのである。

カリスマ二人がハリソン・フォードゲイリー・オールドマンなのに、結局アダム役のリアム・ヘムズワースを売り込むだけの無理矢理展開に終始したのが失敗だった気がします。