「何故彼女等はそうなったか」
松山市の不良少女達の更正施設を舞台に描かれる、いわゆる施設物と呼ばれる、清水宏監督作品に頻繁にでてくる題材の物語である。
メッセージ性がかなり強く、特に秀でた演出も見られない、普通の作品で、唯一ラストシーン、身売りせざるを得なかった施設をでた少女を、町で見かけた先生が、少女達をつれて、彼方に歩いて去っていくシーンのカメラワークが、清水宏らしいワーキングで美しい。
監督のメッセージが、ひたすらでてくる映像表現は、正直、かなりしつこく感じなくもないし、さすがに、時代性を感じてしまう。これも清水宏の個性といわせればそれもまた一本なのであろう。
「母の求める子ら」
堤防の道を、幼くして別れた子供を捜す主人公のあきが、向こうへ歩く姿を点景でとらえ、森の木々の間からカメラがゆっくりと横にパンする美しいファーストショットから映画が始まる。
かくらんぼをしているときに行方がわからないなり、その息子武夫を、あちこちの養育院を探し回るあき。ある養護院を訪れようとしたときに、バスの中で無賃乗車している子供を助けたことから、その子供の養護院につとめることになったあきが、その養護院で出会う様々な子供達の姿、そして、その行く末を物語がとらえていく。
清水宏得意の、横に移動するカメラのむこうに、点景で子供達が散らばるショットがさすがに美しいし、養護院の中をゆっくりと、動いていくカメラや、廊下を、奥行きあるカットでとらえる構図も美しい。
そして、クライマックス、ようやく見つかった子供にあうために行ってみると、その養護院で、子供は息を引き取ったばかりだった。一度は、打ちひしがれ、つとめていた養護院をやめようとするが、大勢の子供達の別れの声に、もう一度引き返して、みんなのお母さんになると言って、引き返してエンディング。
強引なハッピーエンドは、黄金期のアメリカ映画の如しだが、終盤は涙を誘うという、全体がしっかりとしたストーリーの組立になっている。
清水宏得意のカメラワークが秀逸な一本で、なかなかの作品でした。
「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」
少々、ぽっちゃりになったクロエ・グレース・モレッツだが、やっぱりかわいいし、なんと言ってもヒット・ガールがキュートなので、少々のグロテスクさも許せる。
監督が、第一作マシュー・ヴォーンからジェフ・ワドロウに変わったためか、第一作のムードを無理矢理作っている感が伺えなくもないけれど、原作コミックがあるのだから、それはそれでいいとしよう。ちょっと、いただけないのは、キック・アス(デイヴ)の父親が殺されたという下りは、いくら、グロとハードを売り物のシリーズとはいえ、やや、やりすぎた気がするし、かえって、全体のスピード感を鈍らせた気がする。
第一作でヒット・ガール(ミンディ)の父親が死ぬのは、あるべくしてある展開であるし許せるが、今回はよくない。
とはいっても、葬儀のシーンの後、ヒットガールとして復活したミンディが、車の上から撃ち殺すシーンから後のハイテンポなアクションは最高で、拍手したくなった。
悪の軍団を作ったクリスとの集団バトルがクライマクッスになり、ヒット・ガールはロシアからきた化け物みたいな女マザー・ロシアと戦う。
まぁ、第一作のミニシアター的なムードから一転して対策メジャー作品になったことによるスケールアップが、かえって、小品の切れの良さを犠牲にしたという出来映え。
でもでも、クロエ・グレース・モレッツの魅力が十分に楽しめるし、完璧な化粧をした彼女は、さすがにかわいい。
バトルの後、バイクに乗って町を去っていくヒット・ガールのシーンを俯瞰でとらえてエンディング。ぜんぜん退屈しないおもしろさは、善作同様、クロエ・グレース・モレッツがますます好きになってしまいました。