くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ソロモンの偽証 後篇・裁判」「アルファヴィル」

kurawan2015-04-16

「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
原作から、そぎ落とす部分をそぎ落とし、ストーリーのエッセンスを中心に組み立てた作品というイメージで、後半の弱い原作の弱点を結局カバーすることなく終焉を迎えた感じでした。

ただ、だからといって駄作でも凡作でもありません。映画として、前後編に丁寧に描かれた原作のメッセージはちゃんと見えてくるし、主演の藤野涼子の存在感がストーリーを牽引するし、脇に配置していた芸達者な大人の俳優が、さりげなく表にでてくる演出が、作品に張りを与えている。その意味で、それなりの完成度になっているけれど、傑作にはなりきらなかった感じです。

映画は、大人になった藤野涼子が母校に戻ってきての前編のオープニングと同じく始まり、続いて三宅樹里の母親役の永作博美の熱演にカットが変わる。これで一気に物語に引き込み、裁判の当日までを軽く流して、裁判シーンをメインに描いていく。

根本的なストーリーに変更はなく、といって本物の裁判劇ではないので、妙な重さも不必要な緊迫感もない。あくまで学園ドラマ的な演出に終始させた成島出の演出は、それはそれで評価すべきものかと思います。


アルファヴィル
ジャン=リュック・ゴダールのSF映画で
例によってぶっきらぼうに入る音楽、クローズアップされるインサートカットの挿入など、ゴダールらしい映像づくりに魅せられる。

映画は、近未来、独裁者の娘でいっさいの感情を失った彼女に人間性を回復させるために男が派遣される。

全編モノクロームラウル・クタールによる光と影を強調した映像はまさにフィルムノワールの世界観で、さらに実景を未来都市のごとく見せる都市空間の演出、廊下の中を駆け抜ける閉息感などが、独特のモダンSFの世界を作りだしていきます。

背後に流れる、かすれたような男の声によるナレーションは文学的な引用を多用し、ゴダールらしい知的こだわりも見せてくれる。

ストーリーの展開はスピード感があるのですが、無味乾燥に登場する様々な女たちや、人工知能アルファ60が派遣する殺し屋たちの姿が、不思議な違和感を持って、一種独特のフィルムノワールの世界を混在させるために、ちょっと一回みただけで入り込みにくいオリジナリティがあります。

まぁ、ゴダールの作品にシンプルさを求めるのがおかしいといえばおかしいのですが、今ゆっくりと思い返してみると、登場人物の出で立ち、繰り返される銃のやりとりや、暗闇と光を点滅させる演出など、まさにフィルムノワールの世界であって、SFである必要があるのかとさえ思ってしまう。しかし、これが独創的な世界なのだろう。

トリュフォーの「華氏451」といい、やはりヌーヴェルバーグが描くSF映画はどこか特異な感じがしますね。