くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「野蛮なやつら SAVAGES」「毒戦」

野蛮なやつら

野蛮なやつら SAVAGES」
久しぶりのオリバー・ストーン監督作品であるが、なんともアンバランスな映画だった。おもしろくなりそうな物語なのに、主人公たち三人に対する悪役がアクが強すぎる。

なんせ悪役がジョン・トラヴォルタベニチオ・デル・トロ、となれば相当な主人公をもってこないと食われてしまうし、ストーリーが寸断される。結果としてせっかくの二転三転しそうなおもしろい物語が不完全燃焼して終わってしまった。

映画が始まるとオフェーリアという美女がナレーションする。主人公ベンとチョンは良質の大麻の栽培で成功している。オフェーリアはこの二人と冒頭からSEXを繰り広げるという妙な三人の関係が描かれる。

バックにジョン・トラヴォルタ扮する麻薬捜査官デニスがいるので彼らはどんどん荒稼ぎ。そこへメキシコの本職の麻薬カルテルのボスエレナと部下のベニチオ・デル・トロ扮するラドが登場。ベンたちとくむべく近づいてくるが体よく断ったためにオフェーリアが拉致される。このオフェーリアを助けるためにベンたちが紛争するが、チョンはイラクからの傭兵上がりであるためにスナイパーの仲間がいたりと周りを囲むキャラクターも色とりどり。

結局、金で解決しようとカルテルの金を強奪したりしたベンたちだがそれでもおいつかずエレナの娘を誘拐拉致してオフェーリアと引き替えをしようとする。そのクライマックスで銃撃戦になってみんな死んで・・とおもいきや実はこうなったというやり直し映像。最後に漁夫の利をえたのはデニスで、麻薬組織を一網打尽して自分はクリーンになって出世する。

デジタル映像を駆使してスピーディに入る導入部分とかはおもしろいのだが、物語の本編に入り込むあたりが妙にちぐはぐ。ベンたちはどうこういっても違法とはいえふつうの実業家なのである。一方のエレナたちは明らかに闇の世界の組織、しかもこてこての俳優が演じるのだからさらにうさんくさい。バランスがとれないのは必至のことですね。

ベンとチョン、オフェーリアの三人の異常な関係も今一つ生きてこないし、エレナと娘の確執もちょっとひっかけるだけ。デニスの悪役ぶりも今一つ迫力不足になってデル・トロの残忍さもちょっと遠慮気味。そんなこんなで前述したように不完全燃焼の映画になった。もったいないけどこれも作品の出来映えだから仕方ないね。まぁ、二時間あまりを最後まで何とかみれたからいいとするかなという感じです。


「毒戦」
ジョニー・トー監督の新作はアジアン映画祭の特別上映。去年と同じパターンですが、一般公開しないだろうから無理して見に来ました。

ジョニー・トー監督のお遊び満載の香港ノワールの娯楽映画でした。散りばめられた笑いのシーンも楽しいのですが、結局そういうことなのね、と終わらせるラストシーンもまた楽しい。これがジョニー・トー監督の魅力ですね。

一台の車がふらふらと走ってくる。乗っている男ミンは体調が悪いらしく嘔吐しそのままショーウィンドウへつっこむ。

高速道路の料金所に一台のバス。なかにはいかにも怪しい男たちが乗っている。料金所の女性はどこか怪しい。このバスに麻薬の運び人たちが乗っているらしいと警察が待ち伏せしていたのである。そして、一網打尽して病院へ。そこで腸の中に隠していたカプセルを排出させる。そこへかつぎ込まれたのがミン。霊安所へ隠れたミンをジャン警部が逮捕。麻薬の製造の容疑を突きつけ、協力しないと死刑になると脅す。素直に協力するミンもまたちょっとかわいいのだが、いかんせん二枚目すぎるのですがこのギャップもおもしろい。

こうしてミンの協力でジャン警部たちが麻薬取引の現場を押さえて巨大組織を一網打尽にしようとするのが物語の本編。ジャン警部がミンの兄貴分のふりをして入れ替わるコミカルなシーン。たばこ入れに仕込んだカメラが湯差しに遮られる笑いのショット。コカインをすわされるジョン警部のシーン等々至るところに即興のようなお遊びが登場する。

機会があれば逃げようとするミンですが、そのたびにつかまり次の情報を与えるといってその場を逃れる姿もまた滑稽。

クライマックスは小学校の前での銃撃戦。次々と刑事も死んでいき、逃げるつもりだったが逃げきれず、銃撃戦の中何とか生きたミンは、信用ならないということで逮捕、結局死刑宣告となる。死刑執行で寝台に拘束され薬品を注入される。最後まで助かろうと次々と情報をあることないこと叫びながら死んでいくというなんともお粗末なミンの姿がまたこの映画のおもしろさでもあったかなと思います。いやぁ楽しかった。