くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「東京の休日」「路傍の石」(久松静児監督)「女ごころ」「

kurawan2015-06-02

「東京の休日
とにかく楽しい。しかも、映画史をを飾った豪華な大スターが惜しげもなく、ちらちらとでてくるのだから、ため息がでる思いに浸ることができる。監督は山本嘉次郎である。

物語は全くたわいのないもので、アメリカからツアーでやってきた、在米日本人、中でも成功したファッションデザイナーを主人公に、彼女を取り巻いていく様々な人々を通じ、陽気なお話が展開。

歌があり、ダンスがあり、レビューがあり、なにもかもが、映画が娯楽であった時代の息吹がスクリーンからあふれてくる展開がとってもいいのです。

李香蘭が歌う、越路吹雪が歌う、そのほか、うっとりするレトロな世界は最高の贅沢である。

残念なのが、色落ちしていてほとんどモノクロ状態。でも、こんな映画、是非、色彩を再現してほしいと思います。


路傍の石」(久松静児監督版)
ご存じ山本有三原作の名作文学の三度目の映画化、監督は久松静児

やはり久松監督の画面は美しい。オープニング、遠景で、彼方を走る汽車のショットから、運河の脇に立つ旧家のたたずまい、長屋の庶民的な画面、それぞれが、明治末期の物語の舞台をみごととにスクリーンに再現する。

お話は、少年時代の主人公五一が、やがて母の死、そして東京へ行くまでが描かれる。

今となっては、再現できない、さりげない古き日本の姿を見るだけでも値打ちのある映画ですが、さすがに安定した俳優たちの演技に、クオリティの高い一本として楽しむことができました。

こういう映画は大切にしていかないといけません。


「女ごころ」
ちょっとした人間ドラマでした。監督は丸山誠治です。

映画は、中年の夫婦のお話で、ふとした夫の浮気を発見した妻が、夫との別居に踏み切るところから本編へ流れていきます。

夫の浮気相手が、いかにも打算的で、遊び好きな女としてステロタイプで描写され、一方の原節子扮する妻が、ほぼ完璧に近い存在感で登場すると、確かに、間になる夫としては、つい出来心が生まれても仕方ないとさえ思える展開を生み出す。

湿っぽいものもなにもなく、ひたすら、浮気に興じる夫ですが、一方の二人の女は、そんな男を見下しているのかと思えるほどに、手玉に取るような振る舞いを見せる。

物語だけを見ると、平凡な浮気ドラマですが、その描き方は、緻密で、子供や妻の周りの気のいい人物たち、さらに、夫の教え子の生徒たちや、義理の弟とと懇ろになる友人などのキャラクターが、夫婦の物語を見事に浮かび上がらせていくあたりは絶品です。

結局、ころがされたのは夫で、もとの姿に戻ってハッピーエンドなのですが、ストーリーの好みはともかく、ちょっとした逸品という感じの映画でした。、


「慕情の人」
これがなかなかの秀作。監督は丸山誠治
一見、ドロドロした恋愛嫉妬ドラマのごとき展開ですが、ワイプなどを使って、軽いタッチで演出していく丸山誠治の力量が光る。

しかも、原節子が、揺れる女を緊迫の演技で見せるあたり、あまりお目にかかれない役柄に目を引かれるのです。

未亡人で、スポーツ店の社長の立場の主人公が、店の、信頼する支配人に心が揺れてくる。そこに、小生意気で小悪魔的な、亡き夫の妹が、嘘や策謀を繰り返して、かき回してくる展開に、どんどんのめり込んでいくのだが、ラストはさらりと粋にハッピーエンドを迎える。

現代、リメイクしても、遜色がないほどの見事なストーリー構成と、組み立ての妙味を堪能できる作品でした。