「散歩する霊柩車」
演出のキレがないので、せっかくの面白い話が、だらけてしまったのは残念ですが、カルトムービーのような色合いで楽しませてもらいました。監督は佐藤肇。
タクシー運転の主人公が、妻の浮気を追い求めているシーンから映画が始まる。そして、その証拠を掴んだかれは妻に迫るが、シラを切られ、逆上して、妻を絞め殺す。
カットが変わると霊柩車が走っている。中には妻の死体。主人公は、妻の浮気相手を回って、妻が自殺したと吹聴して回る。
家に帰り、棺を部屋に置いて、霊柩車の運転手が帰ると、何と妻は目を覚ます。主人公と妻は、かつての男に金をふんだくる計画だった。まんまと代議士の男が現れ500万置いて帰る。ところがその帰り、たまたま忘れ物を取りに戻った妻と遭遇し、驚いて階段から落ちて死んでしまう。
再び、妻はバーの仕事に出るが、実は浮気相手に会うためだった。たまたま見かけた若い浮気相手が主人公に知らせてやり、主人公は妻の浮気現場のホテルへ。そこで、浮気相手に殺されそうになる妻を助け、反対にその浮気相手の医者を殺す。そして、死体安置所へ運ぶ。
帰ったものの、実は妻は主人公を眠らせ、まんまと金を持って若い浮気相手のところへ。ところが金の包みと思ったら案内状で、慌てて戻ったが、主人公に絞め殺される。
夜が明けて、霊柩車の男が棺を運びにくるが、棺の女は昨日は生きていたと主人公を脅す。しかし返り討ちに遭う。主人公は二つの死体を積んで霊柩車で走るが、妻の亡霊が現れ、とうとう事故を起こし死んでしまう。こうしてエンディング。
面白い話なのに、演出が弱いために、テンポが悪いのとキレがないのが残念な一本ですが、カルトとして楽しめました。
「港祭りに来た男」
映画全盛期の人情時代劇で、作品としては普通なのですが、やはりこの時代の映画は豪華です。見終わって、映画を見たと言う満足感に浸ることができるし、やはり、映画の作り方を心得た人が作ると本当に楽しい。監督はマキノ雅弘。
ある漁村に、居合の達人大五郎を擁した一座がやってくる。実はこの男、彦一という漁師で、かつて、恋人夕を殿様の側室にとられたことから、武士になって取り返そうとやってきたのだ。
この2人の恋物語を中心に、村の若者らの人情悲喜劇を織り交ぜて展開していきます。男と女が一夜限りの契りを結べる祭りをクライマックスに、これでもかと言うエキストラを動員した演出はさすがにマキノ雅弘、見事。
一時は漁師に戻り、夕と一緒になるはずが、殿様の策略で、武士に戻り、大立ち回りの末、夕共々鉄砲に撃たれて死んでしまう。
そのあと何事もなく村人は彼らの非業の死を受け入れてエンディングはやはり古き良き時代劇。
とにかく豪華絢爛で、映画全盛期の一本を堪能することができました。
「囁きのジョー」
映像の面白さと、ジャズを使った音楽センスの面白さ、即興演出のような展開、なかなか見ていて楽しい作品でした。監督は斉藤耕一。
女好きの主人公ジョーは何かにつけて、いつかブラジルにいきたいと呟いている。恋人の加奈子、財閥の御曹司といつもつるんでいるが、先行きの見えない荒んだ毎日を送っている。
そんな時、バーで一人の女と知り合い体を合わせる。その女に、自分は殺し屋で、囁きのジョーと呼ばれていると話す。そんなジョーに女は自分の夫を殺してくれと拳銃を渡す。
夫を呼び出したが、女は冗談だったと叫ぶ。しかし、ジョーは夫を撃ち殺し逃げる。途中、ホームレスの男と行動を共にする。
二人は浜辺で、筏を作る。ジョーはそれでブラジルに行くと言い、加奈子に電話をかけるが、加奈子は警察と一緒にやってきた。加奈子が通報したわけではないが、ホームレスの男は、警察の銃弾を浴び、ジョーは加奈子を撃ってしまう。
重症の加奈子を筏に乗せて、ジョーは海に出ていって映画は終わる。
画面の構図の撮り方や、見せ方が実に面白いし、音楽センスの良さで、洒落た作品に仕上がっています。なかなかの秀作でした。