くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「誘拐の掟」「あん」「夫婦フーフー日記」

kurawan2015-06-03

「誘拐の掟」
リーアム・ニーソンのアクションドラマ。監督はスコット・フランクである。

アル中の警官マットがカフェで座っていて、強盗犯と遭遇するところから映画が始まる。犯人をを撃ち殺し、タイトル。時は20世紀最後の年に移る。

断酒の会で、一人の男ピーターから弟の妻が誘拐されたので、助けてほしいという依頼を受ける。こうしてマットは、猟奇的な誘拐事件に入り込んでいくというのが本編。

誘拐した女性を、バラバラにして送りつけたり、墓地にばらまいたりする犯人を追いつめていくという展開だが、特に際だった場面とテンポもなく、普通のアクション映画という感じである。

麻薬捜査官たちが関わってくる下りも、やや薄っぺらくて迫力不足だし、謎解きに至るおもしろさも物足りない。マットに絡んでくる少年の存在感も今一つ生きていない。

結局、犯人を撃ち殺してエンディング。つまらないわけではなく、おもしろかったが、平凡な一本だった気がします。


「あん」
河瀬直美監督作品というのは苦手なのだが、といって、そのクオリティは評価せざるを得ないので今回も見に行った。

映画は、主人公千太郎がアパートを出るシーンい始まる。どら焼き屋を営む彼の店に、ある日、一人の老婆徳江がやってきて働かせてほしいという。

最初は、躊躇していたが、彼女が持ってきたあんを食べ、そのおいしさに引かれて彼女を雇う。そして、評判になった店は繁盛するが、彼女の手が不自由なのが少し気にかかっていた。

実は、彼女はハンセン病だとわかり、噂が広がって客足が遠のいてしまう。この展開で、いやな映画ではないかと見ていたが、それはそれでさらりと流れ、少し的がはずれた気もして、個人的にはいただけなかった。

母と暮らすワカナという中学生も登場し、ストーリーの核にもなってくるのだが、今一つ、彼女の存在感が見えてこない。

結局、店のオーナーのわがままで、妙な若造が入ってきて、嫌気がさした千太郎は、一人公園の露天で、どら焼きを売るシーンでエンディング。

直前に、徳江の死が描写されたりするが、どれもが今一つ、胸に迫ってくる迫力がない。例によって河瀬監督の、木々をとらえるインサートカットが目立つが、今回、いつものようなムードメイキングな感性が伝わりきらなかった感じです。

ハンセン病のエピソードも、あんこのおいしさのエピソードも、ワカナのエピソードも中途半端に羅列されてしまった感じに終わったという感想です。

駄作ではないですが、樹木希林の限界も見えたような気もして、ちょっと残念に思いました。例によって、そこかしこに河瀬直美の知性の嫌みが見えてくるのだけが、やはり鼻についてしまった。やっぱりこの監督は苦手ですね。


「夫婦フーフー日記」
おもしろい映画になる予感が、永作博美の演技力で何とか持ちこたえたという出来映えの映画だった。その意味では、ある部分に限ってはとっても楽しかった。監督は前田弘二である。

映画は主人公コウタと妻のユーコのほほえましいシーンから始まる。そして、一気にユーコの葬儀の日に移り、ユーコが死んだことを見せる。タイトル。

そして、その場でユーコがコウタの目の前に当たり前に現れ、奇妙でコミカルな会話を繰り広げるのだが、この場面は、さすがに永作博美佐々木蔵之介の絶妙の間の取り方で、どんどん引き込んで笑いを生んでくれるのだが、いかんせん、全体のストーリー構成がよくない。

結果、伝えるべき夫婦それぞれの思い、周辺の人々の心、両親の感情がほとんど表立つことがなかった。それを意図したというのならそれでいいが、ストーリーが、軽いテンポで流れるべくリズムを作っているのが永作博美の演技力というのが表になってしまうのです。

一本筋の通ったメッセージを軸にして、その枝葉におもしろさを生み出す構成にしたらよかったのではないかと思うのですが、結局、何だったのだろうというほど、もったいない出来映えなのです。もう少し脚本を練り込んでほしかった。

とはいえ、永作博美目当ての映画でもあるし、近年、不幸な女ばかり演じてきた永作博美の真の実力を見せられた気がして、うれしかったです。