くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ボヴァリー夫人とパン屋」「新源氏物語」

kurawan2015-08-03

ボヴァリー夫人とパン屋」
滑稽な映画である。脚本も一貫性がない。コミカルなファンタジーで貫き通すには、妙なところでリアルに走ろうとする空気がある。

確かにおもしろいはずなのですが、結局、「ボヴァリー夫人」オタクのおっさんが、自分の妄想に向かいの女性を引き込んで、盛り上がるというお話で、ラストで「アンナ・カレーニナ」の展開へ持っていく段階で、この映画のレベルがドンと落ちた気がした。監督はアンヌ・フォンテーヌ。

七年前に父親のパン屋を引き継いだ主人公マルタンは、「ボヴァリー夫人」という小説の大ファン。

たまたま向かいに、そのボヴァリー夫人の主人公と同じ名前のジェマ・ボヴァリーとチャーリー・ボヴァリー夫妻が引っ越してきたことから、自分の妄想の中に浸り始める。

さらに、小説のなでボヴァリー夫人の愛人となる若い男性まで現れ、実際、その男性と向かいの女性は不倫関係へ。

小説さながらの悲劇的なラストにならないように奔走するマルタンの話かと思うと、ジェマの話が中心に流れたり、一貫性がない。

さらにジェマの元彼が現れ、夫ともぎくしゃくするも、ふとした行き違いで、パンをのどにつめて死んでしまうジェマ、というラストが何とも滑稽。いや、この場面がこの映画で一番よくできているのかもしれない。

結局、新しい隣人が「アンナ・カレーニナ」よろしく、雪の降る場面で暗転というこのとってつけた、いまさらがいかにも良くない。いや、もう一歩もったいない映画なのです。

楽しいはずが、どこかちぐはぐにずれてしまって、ストーリー構成の弱さが、せっかくのおもしろい題材をぶちこわした感じが残念でした。


「新源氏物語
原作は別途あるものの、要するに光源氏の話である。若尾文子特集とはいえ、市川雷蔵作品で、特に秀でた作品でもない。

監督は森一生大映のスターをちりばめ、丁寧に描かれる王朝絵巻であるが、色彩にしても、カメラにしても普通の一本。

正直、眠かった。

物語は、光源氏が成人し、次々と女性と関係を持つか、母の面影から逃れられず、とうとう、母に似ていたという御門の奥方と関係し、その流れの中で、権力争いに巻き込まれていくという話である。

ものの哀れといえばそのたぐいの一本であり、古き日本の姿であるといえばそれまでの映画で、それはそれで見終えると満足感に浸れ留。これも日本映画である。