くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イージー★ライダー」「インヘリタンス」「コンティニュー」

イージー・ライダー」(4Kリマスター版)

午前10時の映画祭で再見。音楽に乗せて、細かいカットをシーン転換に使いながらのどこか殺伐としたアメリカの空気感を醸し出す。まさに唯一無二の名作ですね。監督はデニス・ホッパー

 

主人公ビリーとキャプテン・アメリカがドラッグを仕入れる場面から映画は始まる。そして、空港のハズレ、飛行機が離着陸する場所にロールスロイスが止まり、ドラッグを捌いてしまう。その金をパイプに入れてバイクのタンクの中に忍ばせて二人は旅に出る。

 

安モーテルで宿を取ろうとするが断れて、野宿。途中でヒッピーの男を乗せて、彼の家族がいる場所へ。そこから再び旅立って、とある町の謝肉祭のパレードに参加して、警官に捕まってしまう。無許可だということだが、結局、胡散臭いと思われたのだ。まだまだ長髪さえも人々からは蔑まれていた時代である。

 

牢屋の中で、飲んだくれの弁護士ジョージと知り合い、牢屋を出してもらった二人は、ジョージを交えてまた旅に出るが、途中入ったレストランで地元の人間の冷たい視線を浴びせられ、居た堪れなくなって出て行って野宿していると、夜中に襲われジョージは殺されてしまう。

 

生前ジョージが言っていた娼館へ行くことにして、そこで女を買い、謝肉祭で騒ぎ、ヒッピーに貰ったLSDを試してハイになる。そのあと、また旅に出るが、途中で出会ったトラックの男にショットガンで撃たれあっけなく二人は死んでしまう。

 

自由であることを望みながらも自由に生きる人を恐れる。そんな当時の社会の歪んだ状況を的確に表現して、背後に流れる音楽に乗せて描くロードムービー、まさに名作である。細かいカットを挿入してはシーンを入れ替えて先へ進むが、一瞬で悲劇が襲ってきて、あまりにも虚しいエンディングとなる。アメリカンニューシネマの代表作と呼べる一本です。

 

「インヘリタンス」

目まぐるしいというより、慌ただしいという感じのオープニングのカットつなぎ、観客の心理も考えず、映画のリズムを作るという感じもないこのオープニングにまずあっけに取られる。物語は実に雑で、ポイントが完全にぶれたまま流れるので、面白いのかどうかさえ分からない普通のサスペンス映画でした。監督はボーン・スタイン。

 

暗闇の中、会見を待つ声、主人公ローレンがジョギングをしているシーン、会見上にいるローレンの弟ウィリアム、そして壇上で演説するウィリアム、彼は上院議員として再選を果たすべく奔走していて、地方検事でもあるローレンが応援に駆けつけている。さらに労働者階級に賄賂を渡したという疑惑が起こっているようである。一方、一人の男性アーチャーが胸を押さえて車に乗り込み、間もなくして死んでしまう。一気に背景を見せたいという気持ちはわかるが、セリフを聞く暇もないカット繋ぎは稚拙というほかない。

 

ローレンとウィリアムの父で銀行家のアーチャーが亡くなり、その葬儀から、弁護士ハロルドからの遺言の発表へ続く。ウィリアムは選挙で忙しく、遺産はローレンの十倍を相続、母キャサリンもそれなりに相続する。ハロルドはローレンを呼び一通の封書を手渡す。ローレンが開くと、アーチャーからのビデオメッセージで「秘密はそのままに」と語られ、それだけかいと突っ込んでると、何やら鍵と、ローレンが幼い頃遊んだ敷地内の森に埋めたものがあるという。

 

ローレンが、その場所に行くと地下室があった。入っていくと、首に枷をはめられた男がいた。一旦は逃げるが気を取り直して再度入り、その男がモーガンという名だと知る。そして30年前アーチャーと一緒にパーティの帰り事故を起こして一人の青年を殺してしまった。アーチャーはその死体を埋めてしまったが、モーガンが油断した隙にアーチャーに殴られ、地下室に閉じ込められたのだという。なんとも強引なアーチャーである。しかし、アーチャーが何かにつけて愚痴や話をしにきたので、モンロー家の様々な秘密を知っていた。って、さすがにないのではと思うが仕方ない流れで先を見ます。ウィリアムの選挙に関わっての収賄事件さえも知っていた。

 

ローレンは、モーガンの素性を警察に調査する一方で、モーガンに対する父がした罪を感じ始める。そして、償いに、金と、人生を取り戻すための場所などをハロルドに用意させる。ローレンはモーガンを自由にし、用意したジェットにハロルドと一緒に乗せる。ところが、ちょうど警察からの調査結果が届く。せめて調査が終わってから解放しろよという流れである。ローレンは地下室の整理をしていたが警察からの連絡で慌てて戻ると、母キャサリンが資料を開いていた。そして驚愕する。モーガンではなく、カースンという悪人だというのだ。なんとも突拍子もない無理矢理展開。

 

カースンは30年前、キャサリンをレイプしたのだ。そこからの極悪非道ぶりの描写が実に弱いのだが、アーチャーは彼を地下室に閉じ込めていた。という無理矢理展開はそのままに、なぜか慌てたローレンが空港へ行ってみるとハロルドが殺されていた、またまた慌てて戻るとモーガンはキャサリンを地下室に拉致していた。そしてローレンも手錠をかけて拉致して、モンロー家を破滅させるとモーガンは叫ぶ。そもそも偽名を使っていた理由が不明なのですが。あわや危機一髪というとき、痛めつけられていたキャサリンが突然発砲してモーガンは死んでしまうが、死の間際、ローレンの父だと告白。と、まあ今更の展開で、なんとかモーガンを倒すのだが、アーチャーらの方がしたたかな悪者にしか見えず、ローレンは、なんとも頭の悪い、感情だけで行動する女にしか見えなかった。地方検事なのに。

B級映画に典型的な凡作という感じの映画でした。

 

「コンティニュー」

B級の域をどうあがいても抜け出せないという感じの仕上がりで、面白いように見える物語だが、どこかで見たようなの羅列で、しかもラストに向かって脚本が描かれていないので、あちこちの見せ場全部に力が入っていて、終盤、突然出口が見えるという流れになってるため、ただただ雑多なドタバタ劇にしか見えなかった。監督はジョー・カーナハン

 

起動中というゲーム画面のようなシーンから映画が幕を開ける。主人公ロイの一人台詞で、自分の今の境遇が語られる。朝目覚めて何者かに襲われ、そこからの一連の流れを何度も繰り返しているのだという。冒頭のコミカルなオープニングは面白いのですが、ジェマという博士の存在が出だし少しで紹介されてから、どこかテンポが悪くなる。つまりはこのジェマがロイの境遇を作り出した張本人なのだろうが、彼女は昨日死んでいるという展開から、ジョーという息子が登場するに及んでは、もう物語にまとまりがなくなってしまう。

 

なぜか時間を繰り返す主人公が謎を解いて、なぜ繰り返すのかという原因を探りながら、克服してラストを迎えるという流れが、めちゃくちゃに見せ場ばかり目立った演出になっている。「キル・ビル」みたいな場面が何度もでてくるかと思えば、ロイはなぜか追跡されているという展開になり、では時間ループは関係ないのではなどと考えてしまう。

 

いつも目の前に殺し屋が来るのは奥歯に仕込まれた発信機が原因で、それをつけたのは冒頭のベッドで横に寝ている女で、しかもこの追跡装置を外せばどんどん自分は前に進むし、ジェマが残した謎の言葉を解く本が出てくるがあんまり意味もないし、ジョーという息子との交流を深めることも大切だ的な終盤の展開に、このループを繰り返していたら世界は滅ぶのだが、滅んでも、やっぱり元に戻るという妙な矛盾も見えるし、どうやらジェマの上司のヴェンター大佐が悪者らしいのだが、彼を阻止するためにジェマが仕掛けた作戦らしいが、どうも信憑性に欠ける。

 

とはいえ、装置を止めることができるのはジェマだけで、しかもロイが朝目覚めて一連の殺し屋に殺される途中の14分間にはジェマが生きていることがわかり、いきなり巧みに殺し屋を掻い潜ってヴェンター大佐の元へ突入してジェマを助ける。そして装置を止めることになるが、あくまで理論上の対処法しかないとジェマが言う。って、科学者違うんかいというツッコミの後、一か八かでロイが装置の中に身を捧げて、結果はわからないまま余韻を残して映画は終わる。

 

ループ物が大流行りという感じだが、下手に作るとこうなるという典型的な作品でした。面白いのか面白くないのか、結局B級映画の域は出ない一本でした。