くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラブ&マーシー終わらないメロディ」「野火」(塚本晋也監

kurawan2015-08-05

「ラブ&マーシー終わらないメロディー」
ザ・ビーチ・ボーイズブライアン・ウィルソンの半生を描いた作品である。

ポール・ダノが若き日を、ジョン・キューザックが80年代の彼を演じた二人一役で、交互に年代をつづっていく。

1980年代、すでにザ・ビーチ・ボーイズで名声を手にしているブライアンが、とある車のディーラーに出かけているシーンに始まる。そこで、ディーラーの女性メリンダと知り合い、つきあい始めるが、ブライアンの周りにはユージンという医師を中心に取り巻きの人々がいた。

手持ちカメラの記録映画のようにヒット曲を流して始まるオープニングは軽い映像だが、すでに名声を得たものの、若き日の重圧で、心が病んでしまった彼の姿を描く本編が、かなりシリアスな演出がなされている映画である。

天才的なミュージシャンの成功ストーリーに、陰の部分を挿入するというより、陰の部分を中心に描くこの作品の作り方に、終盤でようやく理解できた感じがした。

実は、ユージンという医師が、ブライアンを利用して、自分の思う通りに操っているのを、メリンダが対処し、ユージンからブライアンを助けるというのがストーリーの根幹でクライマックスになるのである。その意味で、ふつうのミュージシャン映画とはまた違うかもしれない。

本人がまだ現役であるというのも関係があるかもしれない。

ただ、60年代のブライアンの姿と80年代の姿を交互に描くのだが、どうも、リズムに乗りきらず、ブライアンの周辺の人々のドラマが見えない。そのために、次第に心がおれていくブライアンの悲壮感が、今一つ半端な形に見える。それが結局80年代のメリンダとの恋、ユージンたちの行いにメリハリが見えなくさせてしまった。

ユージンから解放されたブライアンが、ベッドの上で、過去に戻り、空間を移動し、まるでシュールな映像表現のような終盤から、メリンダの車の前に飛び出して、再び二人が向き合うラストシーンが妙に際だって映画的なのである。

おもしろく作れた作品だが、今一つ、リズムに乗りきらない映像が気になる映画でした。


「野火」(塚本晋也監督版)
市川崑監督の名作と同じ原作を元にした作品で、監督は塚本晋也である。

もっと平凡な映画になっているかと思ったが、予想以上に出来の良い映画でした。市川崑作品ではややオブラートに包んだ感じの部分も、やや過剰演出気味ながらも、原作の味を出しているように思えました。

物語は、ほとんど、旧作と同じで、展開も変わりなく、後は、カラーと、ややグロテスクな映像が違うくらいのもので、まぁまぁのクオリティに仕上がっています。

オープニングの主人公のアップ場面から、、エピローグまで、退屈することもなく見終えることができました。予想以上の出来映えだったというべきでしょう。海外出品するに値する一本だったと思います。


進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」
アニメの実写版にほとんど成功作品がないので、全く期待していなかったが、これがなんと、かなりおもしろかった。

原作を知るものとしては、ファンではないが、十分満足できる出来映えでした。監督は樋口真嗣である。

映画は、壁が作られ、人々は壁の外に人間を食べる巨人がいることが伝説に近くなっている時代に始まる。このあたり原作とほぼ同じ。細かく覚えていないが、その後の展開もかなり近い。主人公エレンのキャラクターを変更しているので、それに伴い、周辺のキャラクターが変更されている。

とにかく、水原希子がかっこいいし、かわいい。抜群の存在感で前半を牽引する。さらに、CGを有効的に使った巨人のスペクタクル場面、少々グロいが、人間を次々食べる場面も、目を背ける寸前で止まっている。

先日の「るろうに剣心」ごとく、日本のアクション映画の新しい形が見えてきたかもしれない予感がする。

人間ドラマを描くのは、樋口監督は苦手なんだがアクションシーンというかCGアニメシーンの演出の秀逸さでカバーしている感じである。

相対的に、かなりの出来映えといってもいいと思える映画でした。後半が楽しみです。