くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「妻の日の愛のかたみに」「花実のない森」「群青色の、通り

kurawan2015-09-02

「妻の日の愛のかたみに」
とにかく素直に泣いてしまいました。クライマックスはとめどもない涙。が頬を伝いました。

ひさしぶりに目にした難病による悲恋物語ですが、その夫婦愛の美しさ、舞台となる柳川の美しい叙情的な映像にすっかりハマってしまいました。

脚本は木下恵介、監督は富本荘吉、音楽は木下忠司と、ほとんど木下恵介の色合いがふんだんに盛り込まれた作品で、音の入れ方、場面転換のリズムなどは、木下惠介作品のごとしです。もちろん監督が違うので、そこは別物ですが。

映画が始まると柳川の堀。主人公が花嫁姿で小舟に乗っている。おめでとうの声をかける岸の人々。追いかけてくる夫。このほのぼのした美しいファーストシーンから、夫婦の熱々の新婚生活のシーン。しかし間も無く妻はリュウマチに侵され、身動き取れなくなる。

献身的な夫の姿に耐えられなく申し訳ない気持ちに包まれていう妻。時折その気持ちを歌にしてナレーションに挿入される。

まさに悲恋物語の典型的な展開ですが、しっかりとしたストーリー構成と美しい風景のショットのコラボレーション、船越英二若尾文子の熱演に、どんどん引き込まれる。

そして、意を決して夫のいない間に実家に去る妻、追いかける夫、そして、枕元で夫が悲痛の気持ちを伝え、妻が涙する。エンディング。

すっかりハマってしまう秀作でした。いい映画を久しぶりに見ました。


「花実のない森」
松本清張原作のサスペンスですが、なんともバラバラの平凡なミステリーでした。とりとめもなく意味ありげなエピソードが積み重ねられて、結局ああいうことで終わりかな?と思える映画でした。監督は富本荘吉です。

車がエンコして困っている女性2人を通りかかった車のセールスマンの男が乗せるところから物語が始まります。それほどの色男には見えない男ですが、載せた女性の一人、つまり若尾文子扮する女に興味を持ち、調べ始める。

彼女にはどこか秘密めいたところが多々あり、さらに、船越英二扮する男が近づいてくる。

さらに、会社社長で元華族の彼女の兄が登場し、まるで江戸川乱歩横溝正史のようなミステリーの展開へ。

その上、彼女の夫は下半身不随なのに、クライマックス、実は普通に歩けて、しかも船越英二だっっというあっと驚く展開から、夫婦で無理心中するラストへ。

もう何が何だかな?という映画。
冒頭の青年が汽車で去っていって暗転。

なんとも言えない一本という感じの映画でした。今なら、まるでサスペンス劇場ですねと言いたいところです。


「群青色の、とおり道」
普通のローカル映画でした。監督が佐々部清なので見に行ったのですが、よくあるお話とよくある展開、よくあるラストシーンで何の変哲もない一本。

主演の男性も知らないし、好きな女優も出ていないし、ただ監督の名前のみでした。

映画は主人公の青年が父からの手紙で10年ぶりに故郷に戻って来る電車の中から始まる。ミュージシャンを目指して東京へ出たが、未だ目が出ない彼は、故郷に戻ってきて幼馴染やかつての恋人と再会、父はガンで入院、という状況に遭遇し、自分を見つめ直し、故郷で生きることを決めてエンディング。

ねぷた祭りをクライマックスにするという典型的な展開と、無事退院した父と家族と一つにまとまってハッピーエンドのごとく終わるが、家族がバラバラになっている風はないし、経営が苦しいと言いながらも普通に見える。10年待ってた恋人という設定もかなり厳しい。しかし、そんな一つ一つの弱い部分を取り上げる映画ではなく、ローカルな資本で完成された映画としての存在感を認める一本だったと思います。