くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ベトナムの風に吹かれて」「マジック・マイクXXL」「ア

kurawan2015-10-21

ベトナムの風に吹かれて」
久々の大森一樹監督作品。かるいタッチで編集された映像と、挿入される音楽で、リズミカルに展開する物語は、オープニングから実にテンポが良くて、一気に引き込まれる。ただ、脚本が弱いというか、エピソードが乱立していて物語の根幹が見えないのと、細かいところをおざなりにしたところが、非常に陳腐な作品に仕上がった感じがします。

ベトナム日本語学校を営むみさおのところに電話が入る。日本の祖父が亡くなったという知らせ。戻ってみると祖母はすでに痴呆が始まっていて、義父は施設に預ける予定だと告げる。その言葉に、二の返事でベトナムに連れて行きたいとみさおが言うところから物語がはじまるが、ここがいかにも軽い。

そして、ジャンプカットで、ベッドに寝ていたおばあちゃんがベトナムのベッドに場面が変わり、そこで現地の人々との様々なエピソードに絡んでくるのが本編。

ところが、次々と登場する人物とエピソードに、いつの間にかおばあちゃんを引き取ったという本筋がぼやけてくる。それに、いかにも地方気味だったのに、ベトナムでの姿はいきなり普通すぎるのだ。終盤、事故で入院して手術したおばあちゃんが、退院後急に痴呆がひどくなるというのも取って付けた展開で、いきなり、介護の辛酸を舐めるみさおの姿も無理があるし、構成のバランスとしておかしい。

そして、途中のエピソードに出た大女優のおばあさんがなくなり、なぜかちょっと回復したおばあちゃんの姿と、みさおのカットでエンディング。

で、何を言いたいの?この後みさおには悲惨な日々が待ってるのに、軽く流していいのかなという甘さが見える脚本である。

冒頭にも書いたが、シーンのつなぎの軽妙さと、それにかぶせる音楽のハイテンポな演出は、ちょっとオリジナリティがあるのですが、いかんせん、今一歩未完成の感じが否めない。デビュー当時の大森一樹の映画ならこれでいいだろうが、今この程度の演出というのは如何なものかと思うのです。


「マジックマイクXXL」
スティーブン・ソダーバーグ監督の前作の続きであるが、今回監督は変わってグレゴリー・ジェイコブズになる。

物語は、今や主人公マイクは注文家具の会社を経営しているが、仲間に呼ばれて、マートル・ビーチのダンス大会に行くことになる。

そこまでの道中、様々な家や場所でダンスを披露しながらのエンターテインメント満載のド派手な作品。こういうエンターテインメントが好みかどうかはともかく、そのダンスシーンは、かつてミュージカルでフレッド・アステアなどが見せた名人芸を次々と楽しめる点では映画の本来の姿と言えるかもしれない。

特に複雑なストーリはなく、ある意味、舞台シーンを捉えていくだけの作品と言えなくもない。つまらないと言えばつまらないし、楽しめると言えば楽しめる映画なのです。一級品のエンターテナーの妙技を楽しむ一本、そんな映画でした。


「アデライン、100年目の恋」
こういうファンタジーは大好きです。映画のクオリティは普通だし、ストーリーの持っていき方も強引なところがあるかもしれませんが、ほんのりとした切なさと、胸が熱くなる感動が呼び起こされてしまう。これが映画の王道ではないかと思えるのです。監督はリー・トランド・クリーガーという人です。

映画は俯瞰でタクシーを捉える。中には一人の女性が乗っていて、ナレーションで彼女の今が語られる。とあるアパートで偽名らしい偽造書類を受け取り、資料図書館へ。そして、彼女の現代の生活に至る不思議な過去がフラッシュバックとナレーションで描かれていく。

時は1908年、アデライン・ボウマンは生まれた。そして一人の男性と出会い、娘を授かるが、夫は橋の事故で死亡。そんなある日、夜、車を飛ばしていたアデラインは、雪が降る中事故を起こす。そして死の淵を漂う中、落雷で、生き返る。ところが、この時から彼女は年を取らなくなってしまう。

現代の彼女はジェニーと名乗り、この日、カウントダウンのパーティに来た。そこで一人の男性エリスと出会う。しかし、その境遇から、彼と距離をおこうとするジェニーだが、強引なエリスの誘いに、徐々に、恋に溺れていく。さらに、今や、お婆さんとなった娘の応援もあった。娘を演じたのがエレン・バースティンである。

エリスの両親の結婚40周年に招かれたジェニーは、そこで、ロンドンにいた頃、恋に落ち、何も告げずに去った恋人ウィリアムと出会う。しかも、ウィリアムはエリスの父だった。ウィリアムも、ジェニーがアデラインではないかと最初は疑うが、まさかという気持ちで、そのまま流す。しかし、かつてハイキングに行った時に着いた手の傷の跡をジェニーに見つけたウィリアムは、彼女がアデラインだと確信、真相を彼女から聞くのだ。

ここにはおられないと知ったアデラインは車を飛ばすが、事故に遭ってしまう。そして瀕死の中、救急隊のAEDの電流で命を吹き返す。そして、エリスと幸せな生活を始めて、パーティに行く夜、白髪を見つける。アデラインの体は時間を取り戻したのだ。エンディング。

ウィリアムをハリソン・フォードが演じ、脇にしっかりした俳優を配置したことで、映画にはくがついた感じで、この切ないハッピーエンドに拍手したくなってしまう一本に仕上がった感じです。個人的には大好きなジャンルの一本になりました。