くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジョン・ウィック」「白い沈黙」

kurawan2015-10-22

ジョン・ウィック
もう少し面白いかなと思っていたのですが、キアヌ・リーブスに今ひとつアクションのキレがないし、その分を演出でカバーするという力量のある監督でもないようで、単調で面白い展開の話なのに、終盤、飽きてしまった。監督はチャド・スタエルスキという人である。

映画が始まると主人公ジョンが、車から転がり出てくる。瀕死の怪我をしている風で、物語は少し前に戻る。妻を病気で亡くし、死の直前、妻がジョンあてに贈り物とした犬が届くところがオープニング。車で給油の途中、給油所でいかにもゴロツキという男たちと遭遇。

その夜、そのゴロツキは、昼間ジョンが乗っていた車を盗むためにジョンの家に入り、犬を殺し、ジョンを痛めつけて去る。ゴロツキのリーダーヨセフの父だったヴィゴは、ロシアンマフィアのドンで、かつてジョンを殺し屋として組んでいた。今は堅気になっているのを知っているが、ジョンの恐ろしさも知るヴィゴは、ジョンの復讐に備える。一方、ジョンは、封印していた銃などを取り出し、復讐を始める。

電話一本で死体をかたずける掃除屋のチャーリー、特殊な金貨で取引をする、お抱えのコンチネンタルホテルなど、ジョンの周辺の、いや、この裏社会のサポーターのような存在が実に面白いのだが、ストーリーが単調な分、もう一工夫が欲しかった気がする。

展開は、ひたすら銃をぶっ放し、つぎつぎと鮮やかに敵を倒していくジョンの姿を追いかける形で、当然、ヨセフも殺されるが、最後の最後ヴィゴも殺される。途中親友のマーカスの援護から死という展開、女殺し屋の登場などもあるのだが、この辺りが面白く描けたら、もっと楽しめるエンターテインメントになったろうに、やや演出力不足。

まぁ、難しく考えず、気楽にアクションを楽しむ分には普通にいい映画でした。


「白い沈黙」
「デビルズ・ノット」も大概重い作品で参ったアトム・エゴヤン監督の新作も、犯罪ミステリー。しかし。今回は、そのミステリー性が前面に出た形で、やや柔らかくなっている気がする。その意味で面白く見ることができた。

とは言っても、全編に漂うあの暗い沈んだ空気は、たまらないものがあることも確かです。

映画が始まるとモニターにオペラの映像、傍にヒゲを生やした優男、部屋のあちこちにモニターがあり、暗証番号を押してひとつの部屋に入ると、一人の女性がピアノを弾いている。話しかける男。この冒頭部で、この映画の異常な雰囲気が漂ってくる。

モニター画面の向こうに映る一人の女性、どこかホテルの一室で彼女が掃除をしていて、ヘアブラシを見つける。元夫らしい男に電話、娘キャスの持ちものだという。画面が変わり、サングラスをした女性が一人の女性、実は刑事と話している。後に、このサングラスの女性はティナといって、さっきのホテルの女性と同一人物とわかる。

一人の男マシューがスケートしている二人の子供を見ている。一人は娘キャス、相手はペアを組んでいる少年。二人は、これから永遠に一緒にペアを組む約束をし、キャスは父だったマシューの車へ。そして近くのカフェにマシューが入り出てくるとキャスがいない。こうして物語が幕をあける。

担当した刑事はダンロップという女性。冒頭でティナと話していたのが彼女とわかる。さらに相棒のジェフリーは、最初からマシューが怪しいと迫る。このジェフリーの扱いがうまくないので、ラストで、犯人を捕まえるのが彼という展開になっても、今ひとつ、盛り上がりに欠けているのである。

物語は、愛する娘キャスが連れ去れれて8年後と過去を交互に描きながら前半は進んでいく。雪深いカフェや道のシーンと、不気味に犯人がモニターを見ながら、キャスと過ごすシーンが、妙な空気と重さ、異常さを盛り上げてくれる。

ネット捜査で、キャスを見つけた刑事たちは、巧みに誘拐組織に近づこうとするが、そのあたりの描写が実に陳腐で、本当に警察なのかと疑うほどに適当なのが、この作品の最大の欠点だと思う。さらに、恋人の姪の少女をネットで誘拐組織の囮に使ったりしたジェフリーは、一瞬、画面に映ってしまった恋人を犯人のターゲットにされてしまったりする。

一人犯人を捜すマシューは、ある日植木を運んでいて、それを盗まれ、道端に並んでいる植木を発見、それを追いかけていくと、そこに、大人になったキャスが待っていた。犯人が、キャスの申し出で、いっときの出会いを許したのだ。当然、そのまま連れ帰ろうとするマシューに犯人は催眠銃が打ち込む。。

さらに、 母ティナの勤め先のホテルの部屋に盗聴カメラがあることが見つけられ、事件は徐々に解決の方向へ。というか、今まで、警察は何をしていたのかという感じだ。

ある日、マシューが、スケート場でキャスの相手が一人滑るのを見ていると、一人の女性が相手役に近づき、キャスについてインタビューをする。おかしいと思ったマシューはその女をつけていき、かつてキャスが消えた店で、一人の男と話しているのを見つける。マシューは彼らが犯人と確信、彼らの車に自分の携帯を放り込み警察に追跡させる。そして犯人のアジトで、ジェフリーたちが犯人を撃ち、キャスを見つける。

拉致されていたジェフリーの恋人も見つけ、エンディングへと流れる。

確かに、ストーリーと映像を巧みに編集した作り方は玄人好みの映画である。しかし、煩雑にしすぎたために、警察や刑事たちなど描写すべき部分がおざなりになり、ドラマ性が非常に希薄に仕上がってしまった。面白い作り方になっているのに、今一歩、鑑賞後の充実感が味わえないのがそこに原因があると思う。もったいないなと思えるが、映画のクオリティはそこそこの一本でした。