「コロニア」
南米チリで実際にあった拷問施設コロニア・ディグニダを題材にしたサスペンス映画である。目的はエマ・ワトソンであるが、いわゆるB級サスペンスというタッチの作品でした。前半は少々重いのですが終盤一気にサスペンス色が強くなってきて、普通に面白く見れる映画だったでしょうか。監督はフロリアン・ガレンベルガーという人です。
ドイツのキャビンアテンダントのレナが間もなくペルーに到着する飛行機にフライトしている。ペルーには、4ヶ月前に恋人のダニエルが入っていて、大統領支持のポスターの仕事をしていた。
ダニエルにあったレナは久しぶりの再会に喜々として一夜を明かすが、夜明け、ペルーに軍事クーデターが起こり、大統領派の人々が拉致される。たまたま、ポスターを描いていたために、拉致されたダニエルはコロニア・ディグニダと呼ばれる収容所に連れて行かれ、そこで拷問を受ける。
一方でレナは助かったものの、ダニエルを助けるために単身コロニア・ディグニダへ潜入する。そして1ヶ月2ヶ月と潜伏し、ダニエルを見つけ、脱出の機会をうかがう。
教祖と呼ばれるパウルの元で、異常な世界の中、地下道を発見、ついに脱出、大使館に向かうが、なんと大使さえもパウルに情報を渡し、ダニエルたちを捕まえに来るのだ。
すんでのところで、飛行機で脱出してエンディングなのだが、クライマックスがこれでもかというピンチの連続に結構面白さを感じてしまった。
ただ、実際にあった施設という恐怖が後からじわっと伝わってくるちょっと怖い作品でした。
「オーバー・フェンス」
不思議な空気でゆるゆると展開する話なのですが、結局そのゆるゆるのままに、今ひとつ締まりのない出来上がりになった感じの映画でした。監督は山下敦弘です。
妻に愛想を尽かされて東京を離れ故郷の函館に戻ってきた白岩が、職業訓練校で大工の勉強をしているシーンから映画が始まる。ある日、同僚にキャバクラに連れて行かれ、そこで、鳥の真似をするのが好きな聡というホステスと知り合う。
やがて白岩は聡と仲良くなるのだが、突然、わめき散らしたり、感情の起伏の激しい聡に翻弄される。蒼井優が演じているのですが、この聡が今ひとつ存在感が際立ってこない。ただただわめくだけというようにしか見えず、対する白岩の淡々とした中に、寂しさを含むキャラクターと対峙されないので、話がうまく見えないのが残念。
職業訓練校での幾つかのエピソードの後、校内のソフトボール大会がクライマックスになる。
聡が応援に来た途端に白岩がホームランを打ち暗転エンディングとなる。
檻の中に放り込まれたような日常から、ようやく外に飛び立ったというラストなのだが、その開放感が見えないのは、蒼井優のせいかオダギリジョーのせいか。いずれにせよ、あと一歩足りない感じの映画でした。