「股旅」
市川崑監督がテレビシリーズ「木枯らし紋次郎」の収益を元にATGに持ち込んで製作した意欲作である。
渡世人のしきたりを背後のナレーションで説明しながら、くどいほどの口上で一宿一飯の宿にありつく様を描くところから映画が始まる。当時、俳優として開花し始めた萩原健一を始め若手俳優を渡世人に配置し、青春ドラマ的な色合いでスタイリッシュに描いた秀作。とにかく、ハイテンポなシーンは太鼓の音で描いたり、市川崑らしいぴちっと決めた構図もさることながら、細かいカット編集や、美的な画面もいたるところに配置、さらにクローズアップや手持ちカメラなどを駆使したチャレンジ精神溢れる映像はとにかく面白い。
そんなスタイリッシュな画面と裏腹に古臭い形式的な渡世人の仁義などをクソ真面目にセリフに散りばめるあたりも斬新で、ストーリーこそ古臭いのに、まるで青春映画を見ているような色合いが見える。
残念ながら、色あせたフィルムでしたがとっても楽しい一本でした。