くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あなた買います」「僕らの弟」「サザエさん七転八起の巻

kurawan2016-07-18

「あなた買います」
人間ドラマの傑作、小林正樹監督らしい人間の心の奥底に迫る見事な映画でした。

物語は一人の野球選手のスカウトマンの姿を描いています。大学リーグのホープ栗田を獲得するために奔走する岸本。栗田をバックアップし一人前にした球 気にまず近づき、様々な手段で、取り込もうとする。他球団もあの手この手で取り入ろうとしてくる。この丁々発止のやり取りは前半の面白さである。

行き交う金、賄賂、接待。球気の体調の悪さに必死で介抱する岸本は、やがて取引を超えて、人間として接するようになる。そして、リーグが終わり、いよいよ最終契約に栗田の実家に向かう岸本。球気も体調が悪化する中四国に向かうが、着いた途端倒れてしまう。

球切の栗田への最後の願いもむなしく、最後の最後岸本らを裏切る栗田。危篤になっても駆けつけることのない栗田の姿に、岸本はやるせない切なさを感じ、実家を後にする。

華やかにバッターボックスに立つ栗田の姿でエンディングだが、人間の本当の姿、心の奥に潜む冷たさを一気に露呈させる展開が見事。しかし、これが人間なのかもしれませんね。圧倒されます。


「おもちゃ映画ミュージアム企画」
京都のおもちゃ映画ミュージアム協力のサイレントフィルムの上映を見る。
「荒木又右衛門(松之助版)」「荒木又右衛門(悪麗之助版)」「尊王」「玩具映画セレクト」「僕らの弟」を見る。

いわゆる、街中に販売されていたおもちゃ映画と呼ばれるフィルムで、正規のな映画会社所有ではないものも含まれる。まぁ、貴重な作品を観るという感じのイベントでした

「僕らの弟」だけが普通に物語のある中編で、貧しい家族の物語という展開が感動を呼ぶ一本でした。春原政久監督デビュー作である。


サザエさん七転八起の巻」
サザエさん」の戦後初の実写映画で、なんとミュージカル。監督は荒井良平。

たわいのないエピソードが綴られる一本で、軽いタッチで描かれる中編である。

商店街の店の人々が次々と歌ったり、歌謡シーン的な場面も散りばめられる気楽な映画でした。

「海魔陸を行く」
一匹のタコが人間に釣り上げられるが、必死で逃げて海に戻るまでを、様々な動物や自然の生き物の描写を交えながら、擬人的に描いていく楽しい一本。徳川夢声の仰々しいナレーションが帰ってコミカルに聞こえる。