「マリの話」
所々にキラキラ光るシーンやセリフが楽しい作品で、60分と言う中編映画の面白さを堪能できる作品でした。監督は濱口竜介監督の助監督に就いた経験のある高野徹。
四つのパートに分かれて、現実か夢かわからない場面が交錯して展開していきます。スポットライトを浴びる女優マリの姿から映画は幕を開ける。そして場面が変わるとベッドで寝ている映画監督の杉田の姿、次回作の脚本を書いているらしいがなかなかまとまらず、さっきのマリの場面は彼の夢だったようだ。
同僚の青年と韓国居酒屋で酒を飲んでいた杉田は、ちょっと煙草を吸いに外に出た際、一人の女性とすれ違う。なんと夢に出て来たマリそっくりだった。杉田は早速、女優になってみないかと持ちかけるが当然その女性は店を出てしまう。場面が変わると海辺を歩く杉田は海岸べりで立つ女性に声をかける。その女性はマリで、杉田の映画に出ることになっているらしい。二人は海岸を歩いた後、食事をし、酒を飲み、酔い覚ましに海岸へ行く。そして杉田はもう少し飲もうとホテルの部屋に誘う。
ベッドで目覚めた杉田は夢だったかと思うが、シャワールームからマリの声が聞こえて来て現実だとわかる。場面が変わり、マリは試写室にやって来た。画面にはマリが出ている映画が映されているが杉田の同僚は、所々声が録れていないのでアフレコしたいと言う。しかし杉田は行方不明らしい。マリはマイクを持ちアフレコを始めるが、冒頭の夢のマリのセリフと同じセリフを言った後涙が止まらず、女優を辞めると言って試写室を出ていってしまう。
場面が変わると、足の悪い一人の老婦人フミコが縁側に置いた飼い猫の餌を見にいって、猫がいないことに気がつき探しに出る。そこでマリと出会う。マリはフミコと一緒に猫を探し始める。見つからずフミコの家に戻って来たが、フミコは縁側で寝てしまう。傍に座るマリ。やがてマリもフミコに添い寝するが、フミコは目が覚めて、マリの彼氏のことや、猫の元カレのことや自分のことを話しだす。ふとマリが気がつくと元カレと一緒の猫を見つける。
マリはホテルのベッドで脚本を書いている。短編映画を撮ったらしく、外人二人が会話する映画の場面が流れる。女優のアップの後暗転し、杉田が海岸から歩いてくる場面で映画は終わる。
一本筋の通った作品ではないですが、目眩くような現実と空想、夢が交錯する様が楽しい映画でした。